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おっちゃんと坊主と魔王
大矢場智之
 



       暗転中、学校のチャイムの音。


内田先生   おはようございまーす

       
       明かりつくと、小学校の教室。


内田先生   っはい、今日も始まりました内田先生の授業のお時間でーす。みんな用意はいいかなー?
子供達    はーい
内田先生   んーいい返事ですねー。しょうこちゃん今日の調子はどお?
しょうこ   元気元気―
内田先生   しょうこちゃんはいつでも元気だね。先生、明るくて元気な子は大好きよ
しょうこ   いぇーい
内田先生   ともゆきくんは元気?
ともゆき   多分
内田先生   多分かー。先生的には絶対って言ってほしいな
ともゆき   じゃ絶対
内田先生   ともゆきくんも素直でいい子ね。ゆうこちゃんは?
ゆうこ    先生、今日はあたし、カチューシャをつけてみたんだけどどうかしら?
内田先生   あら、素敵じゃなーい。ゆうこちゃんったらお洒落さんねー
ゆうこ    でも先生もとっても素敵
内田先生   ふふん、ありがと。でもお世辞言ったって何にも出ないわよ
ゆうこ    お世辞なんかじゃないわ。だってあたし、先生の前では嘘なんかつけないもの
内田先生   んもー、先生ゆうこちゃんが世界で一番好き
しょうこ   えー、ゆうこが一番なの? じゃしょうこは何番目に好き?
内田先生   順番なんかつけられないよ。先生はみんなが同じくらい好きだからね
ゆうこ    じゃあさっきあたしが一番て言ったのは何だったのかしら
内田先生   冗談に決まってるじゃない。おやっ、あそこに居眠りしてる悪い子がいるぞ。おーい。朝だよー?
カバ男    (ビクッとなって起きる)ああっ
内田先生   どうしたの? 朝から寝てちゃダメダメさんだぞー
カバ男    ごめん先生
内田先生   さては昨日夜更かししてたのかな?
カバ男    してないよ、宿題やってすぐ寝たもん
しょうこ   嘘つけよー、どうせ昨日もブラックジャック読んでたんだろー。先生、こいつ大きくなったら医者になるとか言ってるんだよ
カバ男    うん、外科医になるんだ
内田先生   あら、難しい言葉知ってるのね。外科医って何だかわかるの?
カバ男    んーとね、「先生、血圧が下がってます」とか言われる人
内田先生   あー間違ってないね
ゆうこ    外科医っていうのは、手術をするお医者さんのことだと思うわ
内田先生   ゆうこちゃん物知り
しょうこ   ちがうよ、こいつがバカなだけだよ
ともゆき   そうだそうだ
内田先生   そんなこと言っちゃダメでしょ。バカなんて言葉使っちゃいけません。お友達のことバカって言ったら自分もバカになっちゃうんだからね
ともゆき   そうだそうだ
しょうこ   しょうこはバカじゃないもん
内田先生   そうよ、しょうこちゃんはバカじゃないよ。だからちゃんと謝って仲直りできるよね?
しょうこ   うー
内田先生   ほら、ごめんなさいは?
しょうこ   うー、ごめんなさい
内田先生   んっしょうこちゃん偉いぞ。あれ、たっちゃんはどこ行ったの?
ゆうこ    うんこしてるわ
内田先生   おなかの調子悪いの?
ゆうこ    わからないけど、トイレから出てこないの。ね
しょうこ   チャイム鳴るよって言ったのに
内田先生   あらほんと。ともゆきくん、ちょっと見てきてくれないかな
ともゆき   うんこを?
内田先生   いやいや、たっちゃんを
ともゆき   わかった(出て行く)
内田先生   見るって言っても、個室の中のぞいちゃダメだからね。様子を見てきてってことだから。絶対聞いてないなこれ
坊主     (声のみ)遅れてごめんなさい!
内田先生   あ、たっちゃんの声だね


       坊主走って入ってくる。コケる。


坊主     うわっ
内田先生   あっ、そそっかしい。大丈夫?
坊主     うん、大丈夫
内田先生   おなか痛くない?
坊主     おなかっていうか、今ころんだから足が痛い
内田先生   たっちゃん気をつけてね。教室で走ったら危ないからね
坊主     うん、気をつける
内田先生   あー、ともゆきくんとたっちゃん入れ違いになっちゃったね。しょうがないな、しょうこちゃん呼んできてくれる?
しょうこ   えー、めんどくさい
内田先生   そんなこと言わずに
ゆうこ    でも先生、そうするとしょうこちゃんと入れ違いでともゆきくんが帰ってきそうな展開じゃない?
内田先生   あるよねそういうの。そいで今度はゆうこちゃんがしょうこちゃん呼びに行って、どんどん入れ違いになっちゃうの。おもしろいわよねー
ゆうこ    別におもしろくなんかないわ
内田先生   うん、先生もそう思う
ゆうこ    内田先生ってあれね、場をつなぐためならつまんない話にもとりあえずうなずいておくっていうタイプよね。あたしそういう大人にだけはなりたくないわ
内田先生   てめぶっ殺すぞ
ともゆき   (もどってきて)たっちゃんいなかったよ
内田先生   ごめんねー、たっちゃんもう戻ってきてたの。入れ違いになっちゃったんだ
ともゆき   うぜー(席に着く)
内田先生   じゃみんな揃ったところで、授業始めよっか。えっと、学級委員のちひろちゃんは今日もなんかお休みらしいです。そ・れ・で・はー、宿題のプリントを出してもらいまーす
みんな    うぇーい
内田先生   今日は忘れた人はいないよね? 忘れた人は牛乳を鼻から飲んで目から出してもらうわよ
しょうこ   無理だよ
ゆうこ    無理だわ
カバ男    無理だよ
ともゆき   バーカ
内田先生   何とでもほざきなさい。そいじゃあ、忘れた人ハンズアップ!


       カバ男以外の全員が手をあげる。


内田先生   (のけぞって)うわっ、うわっ、何この人数!5人中4人て! もー何なのー!? 超楽しみ!いいや、もう授業なんかどうでもいい! ダッシュで牛乳買ってくるから待ってて!


       内田先生、行こうとするがみんなが止める。


しょうこ   いや、いや、いや、おかしいって!
内田先生   絶対おもしろいから! クラス全員が牛乳鼻から飲んで目から出してるって絶対おもしろいから!
しょうこ   しょうこはちっともおもしろくない!
カバ男    クラス全員て、僕もやるの!? 僕ちゃんと宿題やってきたよ!
ゆうこ    あら、カバ男くんは自分が助かればそれでいいの?
カバ男    いやそういうわけじゃなくて
ゆうこ    冷たいのね。カバ男くんなんかいじめられちゃえばいいのよ
しょうこ   そうだよ、どうせこいつ宿題やったとか言いながら誰かに見してもらったんだよ
ともゆき   そうだそうだ
カバ男    そんなことないよ! 僕がんばって自分でやったんだから! それに僕以外だれもやってきてないのに誰に見せてもらうんだよ
ともゆき   そうだそうだ
しょうこ   カンニングカバ男だー
ゆうこ    カンニングカバ男よ
ともゆき   略してカンバンニング男


       カンバンニング男コール。カバ男たたかれまくる。


カバ男    やめてよー、やめてよー、手拍子合わせろよー
内田先生   こら、やめなさい! みんなカバ男くんをいじめないの! やめなさい、やめなさい、やめ、パーンチ!パーンチ! パーンチ! (一人ずつ殴っていく)元気百倍! ぼく、アンパンチ!
カバ男    先生、アンパンチはキャラクターの名前じゃないよ
内田先生   みんなよく聞いて、いじめはとっても悪いことなの。カバ男くんはいじめられたら絶対自殺しちゃうから。そしたら先生が責任をとらなくちゃならないの。だからみんな、カバ男くんに謝りなさい! カバ男くんが死なないように必死で機嫌をとって!
ゆうこ    すごいわ、この人本音しか言ってない
内田先生   さ、カバ男くんも立って。本当はみんなカバ男くんが大好きなのよ。でも君はナイーブだから、いじめられてるみたいに感じちゃうのよね。大丈夫、君はいじめられてなんかない
ともゆき   そうだそうだ
ゆうこ    最低の教師だわ
ともゆき   そうだそうだ
内田先生   カバ男くんは宿題ちゃんとやってきたんだもんね?
カバ男    うん
内田先生   偉いぞ。カバ男くんはダサくてきもいけど、クラスで一番まじめな子なんだって事、先生知ってるからね。カバ男くんは、ダサくてきもい。さ、みんな席について。授業始めるよ
みんな    はーい
内田先生   が、その前にー、みんなに新しい宿題を出しまーす
みんな    えー!?
内田先生   忘れた人は扇風機の前に座ってまばたき禁止の刑ね
しょうこ   先生楽しんでるでしょ!? しょうこたちをいじめて楽しんでるよ!
ともゆき   そうだそうだ
内田先生   あら、宿題やってくれば大丈夫じゃない
ともゆき   そうだそうだ
しょうこ   やってきてもいじめるつもりなんでしょどうせ?もう嫌だ、しょうこはこのクラスで反乱をおこす!
ゆうこ    そうよ、反乱軍を組織しましょう
しょうこ   ゆうこ、ともくん、しょうこの後に続け!
ともゆき   おー
しょうこ   カバ男も続け!
カバ男    僕はいいよ、ちゃんと宿題やってくるから


       間。みんなでカバ男をたたく。


内田先生   こら、やめなさい! やめ、パーンチ! パーンチ!パーンチ! 元気百倍! ぼく、アンパンチ!
カバ男    だから先生、アンパンチなんてキャラクターはいないんだよー
       

       坊主にピンスポ。


坊主     (ナレーションで)神様、これが僕のクラスです。変な人ばっかりで、でも先生はもっと変な人で、僕はみんなとあんまり仲良くなれません。しょうこちゃんはわがままないじめっ子だし、ともゆきくんは何考えてるかよくわからないし、ゆうこちゃんは男なのか女なのかもわかりません。カバ男くんもなんだかんだでみんなに溶け込んでるし、僕だけいつも仲間はずれになっちゃうんです
内田先生   カバ男くん大丈夫?
カバ男    うん
内田先生   宿題やってきてくれるね?
カバ男    うん!
内田先生   みんな見て、この純粋な瞳を! 先生がみんなに求めるものはこれなのよ!
しょうこ   どうせ次もカンニングよ
ゆうこ    そうよ、カンバンニング男よ


       カンバンニング男コール。


内田先生   カバ男くん、君はとっても強い子よ! 先生はカバ男くんを信じてるからね! では発表します! 次の宿題はこれだー!
      

       暗転、オープニング映像へ。
       映像の最後に次の字幕。
       
       『第一章 作文』
      
       明かりつくと、ラーメン屋の屋台。
       ラーメン屋のおやじとヤンキー女が言い合っている。


ヤンキー女  だからよぉ、何回同じ事言わせんだっつの。てめえがこんなとこで店やってっからいけねぇんじゃねえか
おっちゃん  あのな、こっちは生活かかってんだからそゆ事言われても困るんだよ。お前は道楽だからいいけど俺っちは死活問題だぜよ
ヤンキー女  道楽だぁ? なめてんじゃねえぞコラァ
おっちゃん  だって道楽だろ? お前のその、何だ、埼玉べにしょうが隊?
ヤンキー女  べにさそり隊だバカ
おっちゃん  それって別に金稼げるようなアレじゃねえんだろ?お前みたいなガキ共がやいのやいの言いながらケンカしてるだけでさ
ヤンキー女  ケンカなんて甘っちょろいもんじゃねんだよ。戦争なんだよ
おっちゃん  戦争ねぇ
ヤンキー女  あたいらはこの界隈の奴ら全員ぶっ潰して、天下とるんだよ。そしたらここはあたいらの城になるわけじゃん? 紅さそり城じゃん? こんなきったねぇ屋台があっちゃ様になんねえわけよ
おっちゃん  あーもうわかったから早くそのラーメン食っちまってくれよ
ヤンキー女  んだてめぇ、勝手に話切り上げんなコラァ
おっちゃん  店じまいにしてえんだって。それにあれよ、客にのびたラーメン食わすのは俺っちのプライドが許さねえし
ヤンキー女  のびたって味変わんねっつーの。元からまじいんだからよ
おっちゃん  だったら注文なんかすんじゃねえよ。ほら醤油、ラー油、酢、塩こしょう、にんにく、しょうが、ザーサイもあるぜ。好きなもん入れて食え
ヤンキー女  何入れたってまじいもんはまじいんだよ。こんな店早く畳んでバックレちまえばいいんだよ
おっちゃん  はいはい畳むよ、それ食い終わったらな
ヤンキー女  (一口食べて恍惚の表情)にゃー
おっちゃん  (笑って)バカ


       坊主が歩いてくる。立ち止まって屋台を見る。


おっちゃん  あほら、もたもたしてっからまた客来ちまったじゃねえかよ。(坊主に)悪ぃな坊主、今日はもう店じまいだよ
坊主     …
おっちゃん  …あの、今日は終わりだから。な
坊主     …
おっちゃん  (ヤンキー女に)なあ
ヤンキー女  あ?
おっちゃん  知り合いか?
ヤンキー女  知らねぇよ
おっちゃん  何かこっち見てんだけど
ヤンキー女  腹減ってんじゃん?
おっちゃん  やでも店じまいだからよ
ヤンキー女  いいじゃねえかよ、作ってやれよ。坊主、こっち来てすわんな
坊主     えっ
おっちゃん  おい
ヤンキー女  (椅子を勧めて)ほら


       坊主、おずおずと椅子に座る。


ヤンキー女  注文しなよ
坊主     え、え、
おっちゃん  あのよ、もうネタ切れてんだけど
ヤンキー女  いっこ残ってんだろ? (カウンターの裏を見て)ほら、それ
おっちゃん  いや、だってこれ俺が食う分だし
ヤンキー女  作ってやれって
おっちゃん  それにこんなもん客に出せねえよ
ヤンキー女  うるっせえな、ガタガタ言わねぇで作りゃいいんだよバカ!


       坊主逃げ出す。


ヤンキー女  あ、ちょっと待って! (引き止めて)ごめん、ごめんね、姉ちゃん怖かったね。大丈夫だよ、このおっちゃんがラーメン作ってくれるから。ね、ほら、座って座って
坊主     …あ、あの
ヤンキー女  んー? どした?
坊主     背、ちっちゃいね


       間。おっちゃん噴き出す。


ヤンキー女  (おっちゃんに)てめ何笑ってんだコラァ!
おっちゃん  いや、おもしれぇよこの坊主。第一声がそれかよ(また笑う)
ヤンキー女  笑うなってんだよ!
おっちゃん  子供は無邪気でいいなぁ、おい。おし気に入った、坊主座れ。ただでラーメン作ってやる
坊主     ほんと?
ヤンキー女  んだよそれ!
おっちゃん  しかもあれだぞ、普通は出さねぇ特製ラーメンだからな。坊主運がいいぜ
坊主     うわぁ、ありがとう
おっちゃん  ちょっと待ってな、すぐ作っから
ヤンキー女  (坊主に)ったくよぉ、人が親切にしてやりゃよぉ
おっちゃん  (ラーメンを出す)はいお待ちどう
ヤンキー女  早ぇしよぉ
おっちゃん  食いなよ
坊主     いただきます
おっちゃん  あちょっと待った! 断っとくがそいつは特製ラーメンだからな、もしかしたら子供の舌には合わねぇかもしれねぇ
坊主     そうなの?
おっちゃん  まとりあえず食ってみな
坊主     うん


       坊主、ラーメンを食べる。


おっちゃん  (ニヤニヤして)どうよ?
坊主     …おいしいよ
おっちゃん  ほんとかぁ? 無理しなくていいんだぜ
坊主     え、でも、すごいおいしい(ガツガツ食う)
おっちゃん  …おいおいマジかよ
ヤンキー女  うめえってさ
おっちゃん  坊主、本当にこれうまいか?
坊主     うん
おっちゃん  …そっかぁ。子供ってやっぱ味覚違ぇんだな
坊主     え、ダメなの?
おっちゃん  いやいや、おいしいことはいいことだ。気にしねえで食いな
坊主     うん
ヤンキー女  (立ち上がって)あーもう何か腹立ってきた畜生。親父、明日からこの店どっか他にやっちまえよ。でなきゃぶっ飛ばすかんな
おっちゃん  あれ、食ってかねぇの?
ヤンキー女  んなまずいもん食えっかよ!
おっちゃん  あそ、じゃこれ捨てちゃお
ヤンキー女  捨てるんなら食う(また座る)
おっちゃん  バカかお前
坊主     …そうだ
おっちゃん  ん?
坊主     おっちゃん、作文書いていい?
おっちゃん  は?
坊主     作文書いていい?
おっちゃん  …どうぞ
坊主     ほんと? ありがとう
おっちゃん  (ヤンキー女に)なんで俺感謝されてんの?
ヤンキー女  知るかよ
坊主     来週までに書かないと、扇風機に顔面はりつけまばたき禁止の刑なんだ
おっちゃん  何言ってんだ坊主?
坊主     今日も鼻から牛乳飲まされたし
おっちゃん  なぁ、最近の子供はコミュニケーションが下手だっつうけど、こういう事なのか?
ヤンキー女  宿題かなんかの話じゃねえの?
おっちゃん  あ、宿題。あそれで作文?
ヤンキー女  だろ
おっちゃん  へぇ、坊主作文書くのか。どんなんだ? 読書かんそー文か?
坊主     でも宿題やってきてもやっぱりやられそうだなぁ、まばたき禁止の刑
おっちゃん  話聞く気ねえんだなこいつ
坊主     ねぇおっちゃん、おっちゃんの尊敬されるところってどこ?
おっちゃん  尊敬されるとこぉ? (ヤンキー女に)どこだと思う?
ヤンキー女  ねぇよ
おっちゃん  うん、正しい。坊主、おっちゃんに尊敬される部分はない
坊主     ええっ。ダメじゃん、そんなんじゃ全然ダメじゃん
おっちゃん  全然ダメとか言われちった。おっちゃん全否定か
坊主     それじゃ作文書けないもん。ねぇ、おっちゃんのすごいところ教えてよ。僕それを尊敬するから。そんでそれを作文に書くから
おっちゃん  何、どゆこと?
坊主     尊敬する人っていう作文書くんだ。でも僕尊敬する人いないから、どうしようかなって思って
おっちゃん  それでおっちゃんの事尊敬してみるってか? 作文書くために? 
坊主     うん
おっちゃん  はーん、やめといた方がいいと思うぞ
坊主     どして?
おっちゃん  おっちゃんは見ての通り、ぼろっちい屋台にしがみついてるだけのホントにただのおっちゃんだからよ。尊敬されるとこなんか一つもねえんだぜ、冗談抜きで
坊主     そうなのかな
おっちゃん  そうなんだよ。俺尊敬するくらいだったら、このだらしないお姉ちゃん尊敬した方がなんぼかましだぜ
ヤンキー女  だらしねぇっつうんじゃねぇよ
坊主     お姉ちゃん尊敬されるとこある?
ヤンキー女  あたいはねぇ、埼玉べにさそり隊でのし上がってって天下取る構えなんさ。べにさそり城を築くのさ
坊主     すごいね、よくわかんないけど
おっちゃん  おい、いっそのことこの坊主入れてやったら? べにさそり隊に
ヤンキー女  あぁ?
坊主     べにさそり隊ってなに?
おっちゃん  遊園地みてぇなもんだよ
ヤンキー女  親父、おい
坊主     それに入ったら、お姉ちゃんのこと尊敬できる?
ヤンキー女  んーまあね。あたいがどんだけ修羅場をくぐり抜けて来たかを教えてやるよ
       

       ヤンキー内野、やってくる。


ヤンキー内野 おいてめぇ、何ダラけてんだよ
ヤンキー女  てめぇこそ遅れてんじゃねえよ
ヤンキー内野 うるせぇ、ちゃんとおとしまえ付けたんだろうな?
ヤンキー女  それがよぉ、この親父しぶとくてよぉ
ヤンキー内野 んだぁ? あたいの手にかかりゃ秒殺だぜとか言っといて何だそのザマぁよお?
ヤンキー女  いちいちうっせんだよこのデブ!
ヤンキー内野 んだとこのチビ!
ヤンキー女  デブ!
ヤンキー内野 チビ!
ヤンキー女  やんのかコラァ!
ヤンキー内野 てめえ誰にも内緒でシークレットブーツ買ってんじゃねえよ
ヤンキー女  てめえこそ胸にシリコン入れるか肉まん入れるかで悩んでんじゃねえよ
ヤンキー内野 安ぃんだよ肉まんの方が!
おっちゃん  な、遊園地みたいだろ
坊主     どこが?
おっちゃん  楽しいだろ?
坊主     んー、ちょっと
ヤンキー女  楽しくねえよ
ヤンキー内野 (ハモる)楽しくねえよ
ヤンキー女  てめぇハモってんじゃねえよ
ヤンキー内野 っせえんだよチビ!
ヤンキー女  デブ!
ヤンキー内野 チビ!
ヤンキー女  デブ!
ヤンキー内野 チビ!
ヤンキー女  デブ!
坊主     ハゲ!
おっちゃん  誰に言ったの今?
ヤンキー内野 なんだい坊主、あたいらのバトルに首を突っ込もうってのかい
坊主     うん、楽しそう
ヤンキー内野 おもしれえ、じゃん? そんなん言うならあたいらのチームに入れてやろう、じゃん?
ヤンキー女  おうよ、紅さそってやろうじゃん?
坊主     チームって他にどんな人いるの?


       間。


ヤンキー内野 んー、まあ、なんか、ね
ヤンキー女  いる、よね。いろんなのが
坊主     例えば?
ヤンキー内野 …例えば、っていうか、ね
ヤンキー女  いる、よね。いろんなのが
おっちゃん  いねえんだろ?
ヤンキー女  っざけんじゃねえよこのクソ親父が!
ヤンキー内野 押し倒すぞコラァ! はめ倒すぞコラァ!
おっちゃん  いねえならいねえって言えばいいじゃねえか
ヤンキー女  いねえよ、ああいねえよ! ぶっちゃけ友達少ねぇよ!
坊主     僕とおんなじだね
ヤンキー内野 え、そうなの?
坊主     クラスで一人ぼっちなんだ
ヤンキー内野 あー、そうなんだ。じゃあ、うん。仲良くしよ?
坊主     うん、仲良くしようね
ヤンキー内野 …おい、やったじゃん?
ヤンキー女  やーべー、ちょっと目頭あちー
おっちゃん  なんかおめえら、あれだな。バカだな
ヤンキー女  坊主よく聞きな、これからそこの公園で紅さそり集会があっからよ、おめえが本気で紅さそりの一員になるってんなら来な。おめえを立派な紅色に染めてやっからよ
ヤンキー内野 覚悟しやがれよぉ
ヤンキー女  じゃああたいらは行くよ。親父、早く店畳めよ
ヤンキー内野 はめ倒すぞコラァ
ヤンキー女  アデュー
おっちゃん  おい金払えよ


       ヤンキーたち去る。


おっちゃん  さて、俺も帰ろ
坊主     帰っちゃうの?
おっちゃん  ほんとはもうとっくに店じまいだったんだぜ? そこに坊主が来ちまったからもう、遅くなっちった
坊主     特製ラーメンもっと食べたい
おっちゃん  おう、また今度な
坊主     また来れば作ってくれる?
おっちゃん  おお。だから今日は帰んな
坊主     絶対だよ
おっちゃん  じゃな


       おっちゃん去る。坊主ニコニコしながら見送る。
       坊主の後ろから魔王が現れる。


魔王     こんな所で何をしている?
坊主     …
魔王     まっすぐ帰らず道草とは、あまり褒められたものではないな
坊主     …
魔王     まあ、わからんでもないがな。最近の子供に一番落ち着く場所はどこかと聞けば、コンビニの雑誌コーナーと答えるそうだ。嘆かわしい時代じゃないか
坊主     (行こうとする)
魔王     今度はどこへ行くつもりだ?
坊主     おまえに関係ないだろ
魔王     ああ、私の知ったことではない。だが友人として忠告させてもらうと、早く家路に着いたほうが身のためだと思うが
坊主     友達じゃない
魔王     メイドが必死になってお前のことを探しているぞ。悪いとは思わんのか?
坊主     そうだね(去る)
魔王     …また会おう
坊主     (戻ってきて)なんでいつもついてくるの?
魔王     私の行く先とお前のそれとがたまたま同じだけだ
坊主     もうやめろよ、放っといてよ僕のこと
魔王     そうはいかん、お前の数少ない友人だからな
坊主     友達なら他にもいるから!
魔王     強がるな
坊主     嘘じゃない! これから友達に会いに行く。新しい友達。さっき仲良くしようねって言われた
魔王     それはめでたい。その新しい友とやらが本当にいるのかどうか、確かめたい所だな
坊主     うるさい!


       おっちゃんが戻ってくる。


おっちゃん  おう、まだいた
坊主     おっちゃん
おっちゃん  タオル忘れちまってよ。最近ボケちまってしょうがねえんだ
坊主     おっちゃん助けて、魔王が来た
おっちゃん  はぁ?
坊主     いっつもついてくるんだよ、魔王が。ほら
おっちゃん  魔王?
坊主     ほら、あいつだよ
おっちゃん  あー…。まあ、よくわかんねえけどがんばれ
坊主     おっちゃん!
魔王     何だ、まだ気付いていなかったのか? 私の姿は他の人間には見えんのだぞ
おっちゃん  (魔王に)ちょっとごめんなさい
魔王     あすいません


       おっちゃん魔王をどけてタオルを取って去る。


魔王     姿を消すことなど造作もない。魔界の王の力をなめてもらっては困るな
坊主     今…
魔王     せっかくの機会だ、他にも私がどれほど恐ろしい力を持っているかを教えてやろう。私はいつなんどきであっても、すぐさまこの場に手下を召喚することができる。その気になれば魔界の軍勢を呼び寄せ、人間界を侵略することも可能だ。見るがいい、次元を超越した我が魔力を!! 召喚!
       

       気持ち悪い音と明かり。
       バケモン叫びながら出てくる。


魔王     どうだ!
坊主     …
魔王     端から紹介していこう。まずこいつ。こいつはカオナシと呼ばれるモンスターだ。他人の声を借りなければコミュニケーションが取れない、悲しい生き物だ。おい、なにか言ってみろ
カオナ    あー
魔王     こんな感じだ。次にこいつ、こいつは王蟲だ。目が青いから攻撃信号は出てないみたいだ
王蟲     (ちょっと動く)
魔王     おお、可愛い可愛い。そして後ろに一部分だけ見えているあれはトトロだ。空を飛んだり木を生やしたり、意味の分からないことを沢山やってくれる
トトロ    めーいちゃーん
魔王     こいつに出会えるのはとても運のいいことだ。そして最後はこいつ
ムスカ    私と戦おうと言うのかね
魔王     ムスカだ
ムスカ    全世界は再びラピュタの元にひれ伏すことになるだろう
坊主     …
魔王     以上、これが魔界の軍勢だ。私のすごさがわかっただろう
坊主     (行こうとする)
魔王     待ってくれ! まだあるから! もっとすごい事できるから! 
坊主     早くして
魔王     わかった。あ、お前らもういいや。帰っていいよ
魔界の軍勢  (のそのそ帰る)
魔王     気つけてな。最近物騒だから。道わかんなくなったらメールするんだぞ。…よし、ではこれを見るがいい


       映像でなんか図が出てくる。


魔王     ここに三枚のピザがあります。そして子供が五人います。五人で同じだけピザを食べたいので、これを五等分することになりました。さて、どうやって切ればよいでしょう? 五等分になるように線を入れて下さい。ただし、(図が変わる)この切り方以外で切ってください
坊主     …
魔王     どうだ。わかんないだろう? この切り方以外でだからな。だが、これは小学生でも簡単に解ける問題だ。難しい数式や計算は全く必要ない。頭の固いお前にこれが解けるかな?
坊主     これ解いたら何かあるの?
魔王     もし解けたら、二度とお前に近づかないと約束してやろう
坊主     ホントに?
魔王     ああ本当だ。解けたらの話だがな


       坊主、紙とペンを出して何か書いて魔王に渡す。
       そのまま走り去る。


魔王     (紙を見て)…三時間悩んだんだけどなぁ


       王蟲が帰ってくる。


魔王     おお。どうした? はぐれちゃった?
王蟲     (魔王にすり寄る)
魔王     あーそうかそうか、じゃあしょうがない、一緒に帰るか
王蟲     (なんか言いたそう)
魔王     ん? 何?
王蟲     (なんか言ったっぽい)
魔王     …いい奴だなお前は。でもまあいいさ。授業参観だけでも見れれば。そのために無理言って休暇をとったのだからな
王蟲     (なんか言ったっぽい)
魔王     そういうわけにもいかんよ。魔界も今は大変な時期なのだ
王蟲     (なんか言ったっぽい)
魔王     …わかってるよ。わかってるとも。だからこうして頑張ってるんじゃないか


       王蟲、魔王に寄り添う。


坊主     (ナレーション)神様、僕は最近、この魔王になつかれて困っています。犬とか猫になつかれるのは嬉しいけど、魔王はいやです。


       暗転。

       『第二章  問題児』

       明かりつくと、再び学校。


しょうこ   ねーねー、今日どうやってカバ男のやついじめてやろうか
ゆうこ    そうね、靴の中に画鋲を入れるっていうのはどうかしら
しょうこ   えー、つまんないそんなの
ゆうこ    でも精神的にも肉体的にも痛いわよ
しょうこ   見てておもしろくないもん。もっと何か、派手なやつがいい
ゆうこ    じゃあ簀巻きにして体育倉庫にとじこめるっていうのは?
しょうこ   それちょっとリアルでやだな


       学級委員ちひろ入ってくる。


ちひろ    こら! また悪だくみしてるんでしょ?
しょうこ   あ、学級委員だ
ちひろ    しょうこちゃんってどうしてそんなに意地悪なの?
しょうこ   そういう位置づけだから
ちひろ    いじめはすっごい悪いことなんだよ
しょうこ   うるさいなー、内田先生みたいなこと言わないでよ
ちひろ    そうよ、これ以上カバ男くんをいじめたら内田先生に言いつけるよ
しょうこ   言いたければ言えばいいじゃん
ゆうこ    内田先生は偽善者だからどうせ見て見ぬふりよ
ちひろ    もー、ともゆきくん何とか言ってよ
ともゆき   (落書きを見せて)ロックマン
ちひろ    (無視)内田先生でだめなら、校長先生に言いつけるよ
しょうこ   校長先生っていつもヒゲいじってるだけで何もしてくれないよね
ゆうこ    出来の悪い大人よ
ちひろ    あ、もう授業始まる時間だ。みんな席につかなきゃダメだよ
しょうこ   いやついてないのあんただけだから
ちひろ    先生おそいなー、何してるのかな
ゆうこ    あなたがここにいると内田先生は永遠に来ないと思うわ
ちひろ    どうして?
ゆうこ    どうしてとかじゃなくて
ちひろ    いいや、あたし先生呼びにいってくる。みんなは席について待ってなきゃダメだからね、おしゃべりとかしてちゃダメだよ


       カバ男入ってくる。


カバ男    大変だよみんな!
ゆうこ    どうしたのカバ男くん、そんなベタな入り方をして
カバ男    たっちゃんが変になっちゃったんだよ!
坊主     (声)カバ男てめー、逃げてんじゃねーよ


       坊主入ってくる。趣味の悪いグラサンかけてる。
       チェーンとかジャラジャラ持ってる。


坊主     てめぇ根性なさすぎだぞコラァ
ちひろ    たっちゃん?
坊主     おうちひろ、久しぶりだなぁ。てめ学校こいよコラァ
ちひろ    えっ
坊主     学級委員のくせして授業フケてんじゃねーぞコラァ
しょうこ   たっちゃん、どしたの?
坊主     どうしたもこうしたもねえよ。俺ぁ紅しょうが隊の特攻一番手だぞコラァ。文句あっかコラァ
しょうこ   たっちゃん頭いかれた?
坊主     んだとてめぇ、やんのかコラァ
しょうこ   (ちひろに)ねえ、先生呼んできた方がいいんじゃない?
坊主     おいちひろ何座ってんだよ
ちひろ    いや、ちひろって呼ばれたら何かドキドキしちゃって
坊主     意味わかんねーよ。早く先公呼んでこいよコラァ
ちひろ    あ、はい。先生、先生! (走り去る)
しょうこ   たっちゃん大丈夫? 何か変なもん食べた?
坊主     おうてめえら、今日はてめえらに喝入れに来たんだぞコラァ。とりあえず全員一列に並べ
カバ男    どうしちゃったんだよー
坊主     いいから並べっつってんだよコラァ
ゆうこ    言うとおりにしましょう


       全員並ぶ。


坊主     おし。おめえらにはなぁ、根性とか気合ってもんが微塵も感じられねえんさ。そんなんじゃこの激しい戦いに勝ち残れねえのさ
しょうこ   戦い?
坊主     おうよ。この町で天下とるために俺たちぁ戦わにゃならねえんさ。この先いくつもの修羅場が俺たちを待ってんぜ
ゆうこ    何の話かしら
しょうこ   わかんない
坊主     おめえらは今日から、埼玉紅しょうが隊の一員だかんな。いい加減なことやってたらネビュラッチェーンが飛ぶぞコラァ
ゆうこ    ねえたっちゃん
坊主     何だ文句あんのかコラァ
ゆうこ    何か無理してない?
坊主     え?
ゆうこ    見ててつらくなってくる。ね
ともゆき   見苦しい
坊主     え、な、何だコラァ
しょうこ   何がしたいのかわかんない。もしかしてあれ? あたし達にかまってほしいの?
坊主     あ、いや、そうじゃねえよ、紅しょうが隊が…
しょうこ   だったらもっとおもしろい事やってよ。たっちゃんておもしろくないんだもん
ゆうこ    おもしろくない人に生きる価値はないのよ、今の世の中
坊主     そうじゃなくて、おめえらの根性を…
しょうこ   それよりさー、それよりさー、みんな作文どうするの? 書く?
ゆうこ    あたしは書くつもりよ
しょうこ   ホントにー? ともくんは?
ともゆき   書く方向で
しょうこ   えー
カバ男    僕も書くよ
しょうこ   カバ男には聞いてない
カバ男    何だよー
しょうこ   みんな書くつもりなんだ。意外だな
ゆうこ    しょうこちゃんはいいの? まばたき禁止の刑で
しょうこ   ヤに決まってるじゃん
ゆうこ    それなら書くしかないじゃない
しょうこ   でもさ、みんなで書かなければみんなでまばたき禁止の刑じゃん。それだったら大丈夫だよ。赤信号、
みんなで渡れば怖くない
カバ男    怖いってば
しょうこ   この前だってみんなで牛乳飲んだじゃん。みんなでやればきっと耐えられるよー。作文なんか書かない
でいいよー
ゆうこ    でもあたしたちはしょうこちゃんの下僕じゃないから
しょうこ   やっぱり書かなきゃ駄目かー、めんどくさー。いないよ尊敬する人なんか。いる?
ゆうこ    いないからとりあえずお父さんて書くわ
しょうこ   ふーん。ともくんは?
ともゆき   右に同じ
しょうこ   じゃあたしもそうしよっかな
カバ男    僕は本当にお父さん尊敬してるから、お父さんて書くよ
しょうこ   だからカバ男には聞いてない
カバ男    何だよ
しょうこ   いいよ、カバ男だけ作文書くな。そしたらそれをネタにカバ男をいじめるから
カバ男    またそういうことするの?
しょうこ   うるさい、近寄るな、カバ男菌がうつる
カバ男    何だよカバ男菌てー
ゆうこ    カバ男菌はカバ男菌よ
しょうこ   カバ男きーん、カバ男きーん
ともゆき   略してバ菌


       バ菌コール。それに混じって「滝沢馬琴」とか「お前ほんとはカバ男じゃなくてバイキンマンだろ」と か聞こえる。 内田先生入ってくる。


内田先生   こらー、またやってるなー! やめなさーい!
しょうこ   先生、こいつ滝沢馬琴なんだよ
内田先生   なんで小学生のあなたが滝沢馬琴を知ってるの。中学とか高校で習いなさい。(坊主のいでたちに気づいて)あら、どうしたのたっちゃんその格好!?
坊主     あ、あの…
しょうこ   先生、たっちゃん何か変なんだよ
内田先生   こんなもの持ってきちゃ駄目じゃない
坊主     お、俺は紅しょうが隊だぞコラァ
内田先生   ん? (坊主に顔を近づけて)…くさい。たっちゃんまさかお酒飲んだの?
坊主     う、うるせー先公
内田先生   …たっちゃんちょっと来なさい。みんなは自習してるのよ。カバ男くんいじめちゃ駄目だからね
坊主     あの、先生、紅しょうが隊が…


       坊主、内田先生に手を引かれて出て行く。
       一間おいてみんな歓声をあげながら後を追う。
       

内田先生   (声のみ)こら、たっちゃん! おとなしくしなさい!
坊主     (声のみ)ネビュラッチェーン!
内田先生   (声のみ)うわー


       殴る音。


しょうこ   (声のみ)あー、たっちゃん何やってんのー!
ともゆき   (声のみ)傷害事件だー
坊主     (声のみ)わー、ごめんなさい、ごめんなさい!


       坊主だけ走って戻ってくる。へたりこむ。


坊主     …いいのかなぁ、本当にいいのかなこれで。言われたとおりにやったのになぁ
坊主ナレ   神様、僕は紅しょうがの魂を教わったおかげで、余計にみんなから遠ざかってしまいました。それどころか先生にもたくさん怒られて、すごく気持ちが参っちゃってます。


       暗転。幕間の映像。

       『第三章  大人たち』

       明転。職員会議が開かれている。


老教頭    んー、やっぱりまずいよねえ、こういうの。ねえ内田先生
内田先生   はい…
熱血先生   教頭先生、内田先生は悪くありませんよ。彼女はしっかりやっています。ガッツありますよ
老教頭    いや、内田先生の責任がどうのって話じゃないのね。やっぱり学校としての体面があれだから
熱血先生   体面なんて気にしてちゃ、教育は成り立ちませんよ。ガッツですよ
老教頭    んーまあねー。でも、ねえ。校長先生
校長     (ヒゲをいじりながら)うん、体裁って大事だよね
老教頭    校長先生もこうおっしゃってるし、やっぱりここはそれなりの対応が必要なんじゃないかと
内田先生   というと…
老教頭    んーだからその、問題の児童。あれだよね、いっつも帽子かぶってる子だよね?
内田先生   はい、たっちゃんです
老教師    あーたっちゃんたっちゃん。彼を一時的に別枠に置いて個別指導ってことで
内田先生   つまり、たっちゃんをうちのクラスからはずすと
熱血先生   待ってください。それでは彼を傷つけることになりませんか? 一人だけ仲間はずれにしてしまうなんて
老教頭    いやいやいや、仲間はずれとかそういう言い方しちゃ駄目よ。あくまで個別指導ね
熱血先生   それで問題が解決するとは思えません。(内田先生に)そうですよね?
内田先生   ええ、私も同意見です
熱血先生   こういう場合はやはりガッツですよ。教育はガッツです
老教頭    ガッツねぇ
校長     ねー君さー、ガッツガッツって言うけど実際どうするの?
熱血先生   何をですか?
校長     いやだから、この件にどう対応するか。ガッツって具体的に言うとどういうこと?
熱血先生   ガッツはガッツです
校長     …や、だから、そのガッツってのは何をどうする事なの?
熱血先生   ですから、学校の体面など気にせず、真正面から問題に立ち向かうんですよ。つまりはガッツですよ
校長     うん…だからー、あのさー、ガッツを説明するのにガッツって言葉使っちゃだめじゃない? 発電所を動かすために電気作るみたいな
熱血先生   …どういう事ですか?
校長     駄目だこいつバカだ
老教頭    んー、サイコ先生はどう思われます? この件に関して


       サイコ先生、無言で携帯を出してメールを送る。


校長     あメール来た
老教頭    私も
内田先生   私も
熱血先生   僕も


       全員、各々の携帯を見る。
       一間置いてサイコ先生を見る。


老教頭    …えー、やはりここは校長に最終的な判断を下していただくということでよろしいですかね?
校長     ん? いや僕はみんなの意見を尊重するから
老教頭    はあ。そうですか
内田先生   あの、私はもう少し様子を見たほうがいいと思うのですが
老教頭    つまり何もしないって事ね
内田先生   そうじゃありません。私思うんですけど、たっちゃんは前向きになったんですよ
老教頭    前向き?
内田先生   ええ。あの子は前からクラス内で孤立しがちで、自分から人にアクションをかけることはほとんどなかったんですよ。でも今回のあの子の行動は、今までじゃ考えられないくらい自主的です。きっと彼の中で心境の変化があったんですよ。何がきっかけだったのかはわかりませんけど
熱血先生   なるほど。つまりあの子がガッツを見せたってことですね
老教頭    んでそれが結果的にああいう形で現れたと
内田先生   確かに問題はありましたけど、あの子なりに考えたんでしょう
熱血先生   そうですよ、あの子は頑張ってるんです。ガッツなんです
校長     君ちょっとうるさいかもね
老教頭    どうだろうねぇ。単純にグレちゃっただけかもしんないよ
内田先生   私はたっちゃんを信じます
老教頭    それよりさ内田先生、聞くところによると子供たちに変なことさせてるらしいね? 牛乳をケツから飲んで毛穴から出すとか何とか
内田先生   そんなことさせてません!
老教頭    あれ? サイコ先生からそう聞いたんだけど。そうですよねサイコ先生?


       サイコ先生、無言でメール。


校長     あメール来た
老教頭    私も
内田先生   私も
熱血先生   僕も


       全員携帯を見る。一間置いてサイコ先生を見る。


老教頭    あの、サイコ先生。メールじゃなくて口で言ってくれませんか


       サイコ先生、無言でメール。
       もうみんな携帯出して構えてる。


校長     …あれ?
内田先生   来ませんね
サイコ先生  今のは友達に送りました


       間。


老教頭    えーと、とにかく内田先生、授業を楽しくやるってのも大切ですけど、あんまりブッ飛んだことされるとやっぱりあれなんで。子供たちが嫌がるのはともかく、親から苦情が来たりすると学校としては非常に困っちゃうんでね。ほどほどにお願いしますよ
内田先生   あ、はい…
熱血教師   教頭先生、彼女は一生懸命なだけなんですよ。教育はやはりガッツだってことを知ってるんです。そうですよね?
内田先生   あーそうかもしんないです
校長     君もう帰っていいよ、バカだから
熱血教師   そうですか? すいませんね、実は子供たちにドッヂボールの相手してくれとせがまれまして、まったく人気者はつらいですよ。でもガッツがあれば大丈夫。それでは失礼します
       

熱血先生、去る。


校長     あいつクビにしようかなー
老教頭    でも確かに子供には慕われてるんですよ。小学生より頭悪い先生っつって
内田先生   彼のクラスはいつも笑いが絶えないんですよね
校長     ねー教頭、なんか僕おなか痛くなってきちゃった。帰っていい?
老教頭    もうちょっと辛抱してくださいね。すぐ終わりますから
校長     早くうち帰ってゲームしたいんだよね
老教頭    校長もこうおっしゃってますんで、結論出しましょうか。とりあえず問題の児童はこのまま様子を見て、おいおい考えていきましょう。内田先生よろしくお願いしますよ
内田先生   はい
老教頭    んで、その子の親御さんに来ていただきましょう。今回の件を報告して、親御さんのほうからも注意してもらうという形で
校長     んー、いいんじゃないそれで
老教頭    そこも内田先生に任せますから、うまいことやってください
内田先生   はあ
老教頭    てことで職員会議はこれで終わります。お疲れ様でした
校長     帰っていいの?
老教頭    はいどうぞ
校長     じゃ一緒に帰ろうよ。途中のおもちゃ屋でガチャポンやってこう
老教頭    お、いいですねえ
校長     キン消しとガン消しどっちにする?
老教頭    どっちもやりましょう
校長     お金なくなっちゃうよ


       校長と老教頭、去る。


サイコ先生  …うちの教師はクズばっかね
内田先生   え?
サイコ先生  子供のこと真剣に考えてる奴なんか一人もいないわよ
内田先生   …そうでしょうか
サイコ先生  あの熱血先生だって、子供に混じってじゃれてるだけで、大事なことが何一つわかってない。子供に甘えてるだけよ
内田先生   …
サイコ先生  内田先生、あんたも同じよ
内田先生   えっ
サイコ先生  子供のためだっつって色々変わったことやってるそうだけど、結局あんたは自分が楽しければそれでいいのよ。他の奴と同じ、自分がよければそれでよし
内田先生   いや、私は…
サイコ先生  この学校に教師なんていないわね。いるのは子供たちと、教師の顔をした子供だけ
内田先生   …サエコ先生も、教師の顔をした子供ですか?
サイコ先生  どうかしらね。でも、自分が子供だって気づくことができたら、その時点でもう大人なんじゃないかしら
内田先生   …
サイコ先生  もう帰るわ。お疲れ様
内田先生   あ、はい。あの…
サイコ先生  何?
内田先生   よかったら、もうちょっとお話させてもらっていいですか?
サイコ先生  ごめんなさい、あたし早く帰ってセーラームーンのビデオ見なきゃいけないの。また今度にして


       サイコ先生、去る。


内田先生   …おめーこそ子供じゃねーかよ。ったく、えらそうなこと言っちゃって。何がセーラームーンだよ。(ちょっと考えて)…セーラームーンコスプレの刑ってのもありかな


       場面転換。内田先生と坊主の母と魔王が立っている。


内田先生   ということですので、よろしくお願いしますね
母      はい
内田先生   それじゃ、今日はわざわざすいませんでした
母      こちらこそ大変ご迷惑おかけしまして
内田先生   あの、何度も言うようですけど、あんまりたっちゃんを叱らないであげて下さいね
母      はい、お気遣いありがとうございます
内田先生   たっちゃんはすごくいい子ですから。きっと何か身の回りに変化があったんだと思います。今度三人でじっくり話してみて下さいね
母      はい
魔王     先生、一つ聞きたいんですが
内田先生   何でしょう?
魔王     今回の件が学校の外に広まるということはありえるんでしょうか?
内田先生   は? いえ、それほど大きな事ではないので…
魔王     教育委員会に話が届くとか
内田先生   そこまではいかないと思いますよ
魔王     もし何でしたら、必要な額をおっしゃっていただければ…
母      (遮って)やめて


       間。


内田先生   えと、それでは今日はこのあたりで
母      ご面倒様でした
内田先生   では失礼いたします


       内田先生、去る。


母      どうしてあんなみっともない事…
魔王     スキャンダルの種を増やしたくないんだよ
母      そうなの。あなたにとってうちの子はスキャンダルの種なの
魔王     誰もそんなこと言ってない
母      魔王には家族なんて邪魔なだけだものね
魔王     おい。言葉が過ぎるぞ
母      …ねえ
魔王     どうした?
母      あなた気づいてたの?
魔王     何を?
母      あの子があんな風になっちゃった事
魔王     …いや
母      あなた、ずっと一緒にいたんでしょ? それでどうして気づかないの?
魔王     四六時中一緒ってわけじゃなかった。いや、どちらかというと探してる時間のほうが多かった。見つけてもすぐ逃げるしな
母      …
魔王     一緒にいたとしても、あまり口を開かんし
母      …
魔王     それよりいいのか? 仕事は
母      人より自分の心配したほうがいいんじゃないの?忙しいんでしょ、魔界は?
魔王     今週いっぱいは休みだ
母      何年ぶりかしらね、あなたがそんなに長い休み取るの
魔王     そうだな
母      本当なら家族三人で旅行に行くべきなんだろうけどね、昔みたいに。上野動物園とか、日光江戸村とか、富士急ハイランドとか
魔王     ディズニーランドとか
母      ディズニーランドは行かなかったわよ。お金かかるから
魔王     そうだったか?
母      遊ぶだけならともかく、お土産をたくさん買わされるからダメだって。あなたが言ったじゃない
魔王     …覚えてないな
母      …でももう駄目ね。こんなになっちゃったら
魔王     何だったら、二人で行ってくればいいじゃないか
母      誰が? 私とあの子で?
魔王     ああ
母      それであの子が喜ぶと思うの?
魔王     私が一緒に行くよりはいいだろう
母      そうかもしれないわね


       間。


魔王     …三人で行こう。もう一回
母      …そうね
魔王     ハワイとか、グアムとか、ヨーロッパとかとかでもなく、日光江戸村に
母      ええ。上野動物園に
魔王     悔いが残らないように
母      そうね


       間。


母      じゃ、もう行くわ
魔王     ああ。(呼び止めて)なあ、
母      何?
魔王     今度から、なるべくメイドではなくお前が夕飯を作るようにしてやってくれないか? 私がこんなことを言えた立場ではないが
母      そうね。でもそれができたらとっくにやってるわよ
魔王     …そうだな
母      あなた、いつから魔王って呼ばれるようになったのかしらね
魔王     …いつからだろう
母      どうすればあなたにかけられた魔法が解けるのかしらね
魔王     …あと、もう一つお願いなんだが、あの子って呼ぶのやめてくれるか? ちゃんと名前あるんだから。ほかの誰でもない、私たちの子なんだから
母      …私の子よ。これからは


       母、去る。
       一人残される魔王。
       そこへムスカがやってくる。


ムスカ    (魔王の肩に手を置いて)私は手荒なマネはしたくないが、あの少年の運命は君が握っているのだよ。リュシータ・トゥエル・ウル・ラピュタ
魔王     …何だよ
ムスカ    言葉を慎みたまえ、君はラピュタ王の前にいるのだぞ
魔王     …
ムスカ    (拳銃を構えて)次は耳だ
魔王     …
ムスカ    ひざまづけ。命乞いをしろ。小僧から石を取り戻せ


       魔王、去る。


ムスカ    目が、目がー


       ひとしきり好き勝手やったあと、照明が落ちる。

       『第四章 おっちゃん』

       屋台。おっちゃんとヤンキー女。


ヤンキー女  でもよ、でもよ、こう切ったらやっぱダメなんだろ?
おっちゃん  ダメだねぇ
ヤンキー女  んーでもよ、こう切んなきゃ四つになっちまうだろ?
おっちゃん  なっちまうねぇ
ヤンキー女  じゃあやっぱこう切るしかなくね?
おっちゃん  いや待て待て、こう切ったらどうよ?
ヤンキー女  ああ?
おっちゃん  やだから、こうじゃダメなんだろ? ならこう切ったら五つになるんじゃねえか?
ヤンキー女  何でだよ
おっちゃん  いやなんとなく
ヤンキー女  なんとなくじゃ意味ねえっつの
おっちゃん  だってもう考えんの面倒くせえし
ヤンキー女  頭悪ぃやつは口出しすんじゃねえよ
おっちゃん  あそういう事言うんだ、自分から頼んどいてそういう事言っちゃうんだ
ヤンキー女  もういい、おめえに頼んだあたいが間違ってた
おっちゃん  つうかさ、こんなん解けたって別にえらくもなんともねえじゃん。何でそんなムキになって頑張るの?
ヤンキー女  うるせえな、次期紅さそり隊長の座がかかってんだよ。これ解けなかったら隊長クビなんだよ
おっちゃん  つくづくバカだねぇお前ら
ヤンキー女  あちょっと待て、これをこう切って…やっべー!
おっちゃん  どした?
ヤンキー女  来たかもしんねー!
おっちゃん  え、解けたの!? 解けたの!?
ヤンキー女  これ見てみぃよ、まずこいつをこう切るだろ?
おっちゃん  うん
ヤンキー女  で次にこいつをこう切るんだよ
おっちゃん  はいはい
ヤンキー女  で最後にこれをこう切れば!
おっちゃん  おー!
ヤンキー女  どうよ!?
おっちゃん  …六つじゃね?
ヤンキー女  あれ?
おっちゃん  五つに切るんだろ? これ六つじゃね?
ヤンキー女  …あーもうヤだ! わかんねー!
おっちゃん  やっぱ頭固い奴にはムリだな
ヤンキー女  ギブアップ! 坊主これ解けねーよ! てか坊主どこ行ったよ?
おっちゃん  作文のネタ探すっつってどっか行ったぜ
ヤンキー女  あいつまだ作文書いてねえの?
おっちゃん  紅さそり隊の隊長さんは尊敬できねえってさ
ヤンキー女  ちくしょう、あれだけ親切丁寧にあたいのすごさを教えてやったのに、まだわかってないようだね
おっちゃん  てかそういう問題を出された時点でなめられちゃってるよな。おめーには解けねーだろ、みたいな
ヤンキー女  あーもー親父、一杯くれ
おっちゃん  あい何にしやしょう
ヤンキー女  ラーメンじゃねーよ、酒だよ。焼酎だよ
おっちゃん  おめえまだ未成年だろ? (酒を出す)って言いながら出しちゃう俺も俺だけど
ヤンキー女  親父今日も勝負な。先につぶれたほうが負け
おっちゃん  やらねえよ。おめえ飲み比べ好きだよね、絶対負けるくせに
ヤンキー女  この前勝ったじゃねえかよ。あたいの圧勝だったじゃないのさ
おっちゃん  そりゃ相手が坊主ならな
ヤンキー女  まあーちっと悪いことしたとは思うけどね
おっちゃん  あの坊主はおめえのせいで確実に人生狂ったな
ヤンキー女  んなことねえよ。むしろあたいが正しい道に戻してやったのさ
おっちゃん  坊主の親父さんが聞いたら何て言うだろうな
ヤンキー女  ありがとうに決まってんじゃねえか
おっちゃん  死んでいいわお前。俺が親父だったら、間違いなくお前のことぶん殴ってるね。人の子供をなんだと思ってんだってよ
ヤンキー女  てめ言ったな? ぶん殴るって言ったな?
おっちゃん  言ったよ
ヤンキー女  マジだな?
おっちゃん  おお
ヤンキー女  命かけて?
おっちゃん  今どき(それかよ)
ヤンキー女  だったらやってもらおうじゃん? ヨボヨボのてめえが若くて美しいあたいを殴れるかどうか? おらやってみろよ


       おっちゃん、ヤンキー女をたくさん殴る。
       石とかで殴る。
       とどめにピコピコハンマー一発。


ヤンキー女  ちくしょー、ちくしょー、屈辱じゃねー最後の一発!?
おっちゃん  これ考えたやつすげえよな。だって鳴るんだぜ、ピコって。ハンマーが。意味わかんなくね?
ヤンキー女  おめえが意味わかんねえよ!


       坊主やってくる。坊主もピコピコハンマー持ってる。


坊主     ただいま
おっちゃん  おう坊主、いいところに来た。坊主もこいつ殴っとけ
坊主     わかった


       坊主、ハンマーで殴る。何故かピコピコ鳴らない。
       叩いた音だけが生々しく鳴る。


ヤンキー女  ちょっと待て、ちょっと待て!
坊主     どしたの?
ヤンキー女  三つ聞きてぇ。ひとつ、なぜあんたがあたいを殴るのか。ふたつ、なぜあんたまでピコピコハンマーを
       持っているのか。みっつ、そしてなぜあんたのピコピコハンマーはピコピコ鳴らないのか
坊主     ピコピコハンマーって、ピコピコ鳴るから楽しいけど、ピコピコ鳴らなかったら痛いだけだよね
ヤンキー女  答えになってねえぞコラァ
坊主     それより解けた?
ヤンキー女  あー? 解けねえよこんなん。あたいの脳みそはこういうことするためにあるんじゃないのさ
坊主     じゃどういうことするためにあるの?
ヤンキー女  まあかいつまんで言うと、ラブ&ピース?
坊主     なにそれ
ヤンキー女  愛と平和と紅さそりって意味さ
おっちゃん  坊主、このお姉ちゃんの言うこと一切信用するな
ヤンキー女  何だてめえ、あたいの思想にイチャモンつけんのかコラァ
おっちゃん  おめえさぁ、それでいいのか?
ヤンキー女  何が
おっちゃん  おめえの生活はすべて紅さそりのためにあんの?
ヤンキー女  ったりめえだよ
おっちゃん  将来とか不安になってこない?
ヤンキー女  かーんけーねーよ!! あたいは一生を紅さそりに捧げるのさ! 紅さそりの魂、百までよ!
おっちゃん  人生を棒に振る覚悟なんな。すばらしいと思います
ヤンキー女  だろ?
おっちゃん  坊主、今度からこの姉ちゃんに会ったら唾を吐いてやんな
坊主     わかった
おっちゃん  じゃさっそく一発
坊主     んー(唾を吐く溜め動作)
ヤンキー女  おい、ちょと待てコラァ! 待てって!


       坊主とヤンキー女走り回る。それを見て楽しむおっちゃん。


ヤンキー女  おい親父、やめさせろよ!
おっちゃん  坊主、今だ
ヤンキー女  バカ野郎!
坊主     …あ
ヤンキー女  あ?
坊主     飲んじゃった
おっちゃん  駄目じゃねえかよー。はい、第二弾セットー
坊主     んー
ヤンキー女  おい!
おっちゃん  (笑って)おい坊主、特製ラーメンできたぜ
坊主     ほんと?
おっちゃん  ほら
坊主     うわぁ、いただきまーす
ヤンキー女  親父よお、おめえはよお…
おっちゃん  姉ちゃんの分もできたぜ
ヤンキー女  いただきます
おっちゃん  あいよ、普通のラーメン一丁


       ラーメンをすする二人。


おっちゃん  そういや坊主
坊主     んー?
おっちゃん  作文はどうなった?
坊主     んー…
おっちゃん  まだ考え中か
坊主     うん
おっちゃん  ほんとに誰もいねえの? 尊敬できる人
坊主     いないよ
おっちゃん  クラスのみんなはどうするっつってんの?
坊主     みんなお父さんって書くって
おっちゃん  じゃあ坊主もそうすりゃいいんじゃねえか?
坊主     (箸が止まる)
おっちゃん  え、ダメなの?
ヤンキー女  だからあたいで書きゃいいっつってんじゃんよ
おっちゃん  第三弾セットー
坊主     んー
ヤンキー女  んだよもー!
おっちゃん  でもよ、そろそろ提出期限だろ?
坊主     うん、明日まで
おっちゃん  マジかよ
坊主     明日の授業参観で読まなきゃいけないんだ、作文
おっちゃん  じゃあこんなとこでラーメン食ってる場合じゃねえだろ
坊主     だってほんとにいないんだもん!
おっちゃん  それってよ、身近な人じゃなきゃ駄目なんか? 野口英世とかだとルール違反なの?
坊主     うん、実在する人じゃなきゃ駄目
おっちゃん  …おい待てよ、野口英世実在するって
坊主     この世に生きてる人ならいいんだって
おっちゃん  あ、そゆこと。じゃああれだ、スティービーワンダーとかどうよ
ヤンキー女  スティービーワンダーは死んだだろ!?
おっちゃん  死んでねえから! どっから来た情報だそれ
坊主     スピィーディーガンダムって?
おっちゃん  坊主も間違えすぎだな。スティービーワンダーってのはな、目が見えないのにピアノ弾いて歌うたうすごい人だよ
坊主     すごいじゃん
おっちゃん  まあ、俺やこの姉ちゃんよりすごいことは間違いねえな
坊主     そんなことないよ、おっちゃんもすごいよ
おっちゃん  んなことねえよ
ヤンキー女  あたいはすごくないの?
おっちゃん  第四弾セットー
ヤンキー女  (同時に)第四弾セットー、って来るんだろどうせ!? もうパターンなんだろ!? いいよ、来いよ! あたいを唾液まみれにしてみなよ!
坊主     おっちゃんもすごいってば
ヤンキー女  シカトかよシカトかよ! あたいには唾液さえももったいねえってのかコラァ!
おっちゃん  坊主、あんなところに石があるぞ
坊主     ほんとだ
おっちゃん  そしてここに騒がしくて邪魔な女がいるぞ


       坊主、ヤンキー女に石を投げる。


おっちゃん  投石ー
ヤンキー女  もうやだー、あたい泣きそう
おっちゃん  ほら、ラーメンのびちまうぜ
ヤンキー女  あたいの味方はこのラーメンだけさ
おっちゃん  そうそう、うまいラーメンは決して人を裏切らねえからな
坊主     そうなんだ
おっちゃん  おうよ、ラーメンの暖かさはこれ、人の温かさにほかならねえよ。俺ぁもう十何年もラーメン作ってっけど、最近になってようやく気づいたな。うまいラーメンは人を幸せにする近道よ
坊主     かっこいい
おっちゃん  かっこよくねえよ
坊主     やっぱりおっちゃんはすごいや
おっちゃん  すごくねえよ
坊主     (ラーメンをすすって)わかった!
おっちゃん  ん、何が?
坊主     僕やっぱおっちゃんで作文書く!


       おっちゃん無言。


坊主     駄目かな?
おっちゃん  …
坊主     僕おっちゃんのことほんとに尊敬してるよ。こんなうまいラーメン作れるんだから
おっちゃん  …
坊主     ほんとだってば
おっちゃん  坊主
坊主     なに?
おっちゃん  人間はな、目指すものが一つ見えると、それに向かってまっすぐ進む生き物なんよ。坊主もいずれは目指すものを見つけて、そこへまっすぐ歩いてくようになるわけよ。ただな、人間はバカだから、たまーにだが目指しちゃいけないものに向かっていっちまうことがあるんだな。それをやっちまっちゃ終わりなんさ。わかるか?
坊主     んー…
おっちゃん  坊主がおっちゃんを尊敬したら、もしかしたら坊主はおっちゃんを目指して歩いちまうかもしれねえんだ。それじゃ終わりだぞ
坊主     なんで終わりなの?
おっちゃん  坊主、その特製ラーメンはな…


       ライバル内村がやってくる。


ライバル内村 ごきげんよう、ミスター田中
おっちゃん  来たな内村
ライバル内村 相変わらず子汚い屋台ね、ミスター田中
おっちゃん  おかげさまでな
ヤンキー女  親父おめえ、田中って名前だったのか?
おっちゃん  まあな
ライバル内村 そう、そして私は一大ラーメンチェーン内村屋の創始者、内村てる子よ
ヤンキー女  勝手に自己紹介
ライバル内村 ちょっとお邪魔してよいかしら?
おっちゃん  帰れ
ライバル内村 じゃあお言葉に甘えて(座る)
ヤンキー女  帰れって言われたのに
おっちゃん  何度言われても無駄だかんな
ライバル内村 何度断っても無駄よ、あなたにつっぱねるほどの余裕がないのはわかってるんですからね。私に従ったほうが身のためよ
おっちゃん  余計なお世話だっつの
ライバル内村 田中くん?
おっちゃん  何だよ
ライバル内村 田中くん?
おっちゃん  ああ?
ライバル内村 田中くん?
おっちゃん  だから何だよ
ライバル内村 学生時代あなたに貸した四万円、返していただけないかしら
おっちゃん  …
ライバル内村 どうしてもお金が必要だって言うから身を削る思いで貸してあげた四万円、まさか競馬につぎ込んだとは思ってもみなかったわよ
おっちゃん  そんな昔の話
ライバル内村 お金って不思議ね、借りたほうは簡単に忘れることができるのに、貸したほうは死ぬまで忘れないものね
おっちゃん  おめえが守銭奴だからだろ
ライバル内村 そう、あたしは守銭奴、お金さえあれば一生処女のままでも構わない
坊主      処女って何?
おっちゃん   処女っていうのはな、生まれてから一度もセックスしたことない女のことだぞ。ちなみに男の場合は童貞、もしくはチェリーボーイという。そしてこっからが大事、セックスというのはな、男と女がお互いの性器を結合
ヤンキー女   おい! もうやめとけ
ライバル内村  田中くん、おわかりでしょうけど、私は昔話をしにきたわけではないわ。私たち二人の輝かしい未来について語りに来たのよ
坊主      おっちゃんこの人と結婚すんの?
おっちゃん   何でだよ。するかよこんなブスと
ライバル内村  さ、早いところ結論を出していただきたいわね
おっちゃん   じゃ結論。ノー!
坊主      ノー!
ライバル内村  ノーは認めない! それからそこのぼっちゃん、話わかってないのに参加しない!
坊主      おこられちった
ライバル内村  田中くん
おっちゃん   ノー!
ライバル内村  田中くん
おっちゃん   ノー!
ライバル内村  田中くん
おっちゃん   ノー!
ライバル内村  (口調が変わって)田中君
ヤンキー女   あれっ
ライバル内村  私は善意で言ってるんだからね
おっちゃん   …
ライバル内村  あなたの腕は悪くないわ。私の店でも十分に通用するくらいに。来てくれれば待遇は保障するし、お望みならあなたにお店を持たせることもできる
おっちゃん   うるせえよ
ライバル内村  何だったら商品開発に回ってくれても構わないわ。あなたが昔作ったカルボナーラ風納豆入りギョウザ味噌煮込み冷やし中華、おいしかった。あれぐらいインパクトのある味を作り出せるのは…
おっちゃん   うるせえよ! お前うるせんだよ! もう放っとけよ俺のこと!
ライバル内村  正直言ってね、私は今のあなたを見てらんないのよ! ポリシーがどうとかつまんないこと言ってこんな屋台にしがみついて、奥さんにも逃げられて、その日暮らしていくにも困る有様で! なけなしのお金はギャンブルに使い果たして、それにあたしが一番気に食わないのはね、まともにご飯も食べられないくせに客には見栄張って手の込んだラーメン出してる事よ!
おっちゃん   そんなのお前の知ったこっちゃねえだろ!? お前に俺の生き方とやかく言う資格あんのかよ!
ライバル内村  そうやってかっこつけてれば誰かが褒めてくれるとでも思ってるの?
おっちゃん   褒められたくて屋台やってんじゃねえんだよ!尊敬なんかしてほしくねえんだよ誰にも!


        間。


ライバル内村  …今度、北海道に新しいチェーン店ができるわ。あなたにはそこで働いてもらいます。(封筒を出して)これ、航空便のチケットと支度金。それじゃ


        ライバル内村、去る。


ヤンキー女   …修羅場だぜ、おい
坊主      おっちゃん
おっちゃん   坊主、今日はもう帰れ。作文は誰かほかの人で書きな
坊主      …あの
おっちゃん   何だよ
坊主      …


        おっちゃん去る。


ヤンキー女   …カルボナーラ風、納豆入りギョウザなんとか冷やし中華? 料理っつうかもう…生ゴミじゃん
坊主      …
ヤンキー女   あのーあれだほら、給食でみんなが残したもの全部一緒にしました、みてえな。ドロドローって。気持ちわりー
坊主      …


       魔王がやってくる。


魔王      今日もここに来ていたか
坊主      …
魔王      最近は入りびたりのようだな。そんなにラーメンが好きか?
坊主      そうだよ
魔王      家に帰ればもっとうまいものがあるだろう
坊主      ない
魔王      そうか分かった。ならば私が魔界から最高のラーメンを召喚してやろう。召喚!


       気持ち悪い音と明かり。


坊主      (さえぎって)いらないよ! 何だよ魔界のラーメンて!
魔王      魔物のエキスを凝縮したラーメンだ。目玉とかいっぱい浮いてて気持ち悪いぞ
坊主      そんなの食べるわけないだろ!?
ヤンキー女   あたいちょっと食いてえかも
坊主      何でだよ、おかしいよ姉ちゃん
魔王      おお、このなにからなにまで小さそうな女は誰だ?紹介してくれ
坊主      僕の友達
ヤンキー女   あたいはねえ、この界隈を支配しようともくろむ紅さそり隊の隊長さ
魔王      おおそうか、お前も魔界の一員になりたいと言うのだな
坊主      言ってない! 会話かみあってないぞ。それよりお前早くあっちいけよ、ここは僕の場所だからな
魔王      まあそう邪険にするな。今日は贈り物を持ってきたんだぞ


        魔王、紙袋からピコピコハンマーを取り出す。
        ヤンキー女、飛びすさる。


魔王      どうした女?
ヤンキー女   何だよこれ、仕組まれてんの?
魔王      何をわけのわからんことを。ほら見てみろ、これはピコピコハンマーと呼ばれる代物だ
坊主      知ってるよ
魔王      だがこいつは普通のピコピコハンマーとは一味違う。何とピコピコならないピコピコハンマーなのだ。ためしに何か叩いてみるがよい
坊主      いい
魔王      遠慮するな。なんなら私が変わりにやって見せてやろうか? えー何か叩くものはと
       

       魔王とヤンキー女、目が合う。
       魔王、ヤンキー女に向かってずんずん歩いていく。


ヤンキー女   なんであたいなのさ!
魔王      目が合った
ヤンキー女   ざけんなコラァ!


        ヤンキー女いっぱい叩かれる。


魔王      すごいだろう? 殴った音しか聞こえないのだ


        坊主、さっき自分で持ってきたハンマーを取り、
       ヤンキー女を叩く。


坊主      もう持ってるからいらない。早く帰って
魔王      そう、か。いいだろう、私はもう帰らせてもらう。だがな、一つ伝えておく。今日の夕飯は母親の手作りだぞ
坊主      …ほんとに?
魔王      本当だ。だから早く帰ってやるがいい
坊主      嘘だ
魔王      嘘など言うものか


        間。


坊主      お姉ちゃん、僕帰るね
ヤンキー女   あ、おう
坊主      そのラーメン残ってるから食べていいよ
ヤンキー女   えー。あいや、ありがとよ
坊主      じゃあね
ヤンキー女   おう、また明日な
魔王      明日の授業参観では何やら作文を読むらしいな。私も見に行かせてもらうぞ。楽しみにしている


       坊主、去る。


魔王     おい女
ヤンキー女  おめぇ女って呼ぶのやめてくんね?
魔王     この屋台の店主はどこにいる?
ヤンキー女  知らね、どっか行っちった。今日もう帰ってこねえんじゃねえの
魔王     そうか。一度挨拶がしたいと思っていた
ヤンキー女  何でだよ


       魔王、去る。


ヤンキー女  シカトかよコラァ
坊主ナレ   神様、僕は今日、すごく久しぶりにお母さんの手料理を食べました。食べている間、お母さんはなんだか気持ち悪いくらい優しかったです。


       場面変わって坊主の部屋。坊主頭をかいている。


坊主     (突っ伏して)はあ〜。神様〜


       神様出てくる。


神様     はいどうもー、神様でーす
坊主     神様どうしよう、作文書けないよ
神様     あー作文ねー。大変だよねー、神様も大学のとき卒論すんごい苦労したよー
坊主     ねえ、神様ならこれ誰で書く?
神様     そうだねー、神様だったら尊敬する人は神様って書くしかないよね
坊主     自分のこと書くの?
神様     だって神様より偉い人いないじゃん。横綱より強い力士がいないのと同じだよ
坊主     なんかそれすごくやな奴だよ
神様     いいじゃん、君も自分のこと尊敬しますって言えば。こんなんどうせ言ったもん勝ちだよ
坊主     それじゃきっと先生に怒られちゃうよ
神様     そっかー、じゃ誰で書いたらいいの?
坊主     僕が聞きたいんだよ
神様     神様だってわかんないよー。結局卒論書かなかったんだから
坊主     え、宿題さぼったの?
神様     うん、でも先生にお金いっぱいあげれば卒業できるんだよ、大学って
坊主     へー、いいなあ
神様     ねーねー、本当に尊敬する人いないの?
坊主     うーん
神様     一人も?
坊主     一人だけいるけど、その人に書くなって言われちゃったんだ
神様     どうして?
坊主     わかんない。間違ったものを目指しちゃいけないんだって
神様     なにそれ
坊主     なんかそういうこと言ってた
神様     ねー君さー、普段あんま人の言うこと聞いてないでしょ?
坊主     うん、よく言われる
神様     でしょー。僕もよく言われるんだよね、話ちゃんと聞けよって。この前友達と庄屋に飲みに行ったんだけどさ、恋話とかされても全然聞いてなくて。いや、僕は聞いてるつもりなんだよ。でも恋話ってコメント難しいじゃない? いや、難しく考えるからいけないんだろうけど、やっぱり「ふーん、そっかー」くらいしか言えなくて。そんなんだから「お前話聞いてたのかよ」って言われちゃうのね。わかる?
坊主     わかんない
神様     うん、僕も何言ってんだかって感じだね
坊主     そんなことより作文どうしよう
神様     他のみんなはなんて書くって?
坊主     お父さんだって
神様     あーそっか。こういうのお父さんって書いとけば無難だしね
坊主     でもみんなきっとお父さんて書かないよ。いい加減な人ばっかりだから
神様     気が変わったとか言うんだよね。いるよね、マラソン大会で一緒に走ろうねって言っときながら、いざ走ってみると自分のペースで完全独走ってやつ
坊主     ていうかお父さん尊敬してないからね、みんな
神様     君はどうなの? お父さん尊敬してないの?
坊主     してない
神様     そうなんだ。君のお父さんてどんな人?
坊主     僕のお父さんは…
神様     お父さんは?
坊主     そんなんどうでもいいよ、誰かほかにいないの、尊敬できそうな人?
神様     だから神様は神様しか尊敬できないんだって。僕に頼らないで自分で書きなよ
坊主     じゃ何しに来たんだよ
神様     僕はただジーパン買いに行くついでに寄ってみただけだもん。じゃもう行くからね。頑張ってね
坊主     待ってよ、一緒に考えてよ!
神様     ひっぱんないでよ、これ手作りなんだから
坊主     助けてよぉ
神様     尊敬する人いるんでしょ? その人で書けばいいじゃん
坊主     だから駄目だって言われたんだよぉ
神様     わかんないよ、本当は書いて欲しいのかもしれないよ?
坊主     何でそうなるの?
神様     大人は嘘つきだから
坊主     ほんとかー?
神様     ほんとだよ。その人きっと君に尊敬してほしいんだよ。よくわかんないけど
坊主     そうなのかな
神様     書きたいように書いてごらんよ。じゃ、僕ジーパン買ってくるね。バイバーイ


       神様去る。


坊主     …(突っ伏して)でもな〜…


       小鳥のさえずりが聞こえながら暗転。

       『第五章  魔王』


内田先生   (暗転中に)おはようございまーす。


       教室。カバ男とゆうこは欠席。そのかわり魔王がいる。


内田先生   さ、今日も始まりました内田先生の授業のお時間でーす。みんな用意はいいかなー?
みんな    はーい
内田先生   うーん、声がいくつか足りないねー。今日は作文の発表だからね、予想通りバックレた奴、多数と
しょうこ   カバ男が休むのめずらしいねー
内田先生   まあ所詮は彼もその程度ってことだよ。そんかわしここにいるみんなはちゃんと作文書いてきてくれたよねー?
しょうこ   先生ー先生ー、しょうここんなにいっぱい書いてきたよー
内田先生   わあ、すごいわね。さては授業参観だからいいとこ見せようって腹だな?
しょうこ   いえーい
内田先生   しょうこちゃん、ちなみにその原稿用紙は一枚に何文字書けるやつかな?
しょうこ   んーとね、二文字(見せる)
内田先生   それもう習字だぞー。ともゆきくんは作文書いてきた?
ともゆき   なめんなよ
内田先生   ともゆきくんもやる気十分だね。たっちゃんは?
たっちゃん  …
内田先生   たっちゃーん?
たっちゃん  あ、はい
内田先生   作文書いてきた?
たっちゃん  うん、僕生まれて初めて徹夜した
内田先生   あらまあ、たっちゃんも頑張ったんだね。それじゃ、みんなの苦労の結晶をお父さんお母さんの前で読んでもらおうね。あ、父兄の皆様よろしくお願いします
魔王     (おじぎ)
内田先生   じゃあまずしょうこちゃんから読んでもらおうか
しょうこ   っしゃー。(原稿用紙をめくりながら読んでいく)わた、しの、そん、けい、する、ひと、は、(ドラえもんの絵が出てくる)これ!
内田先生   はーいちょっと待ってねー。これ実在しないよねー? ありえないよねー少なくとも今世紀中は
しょうこ   (めくって)これ!
内田先生   強調したって駄目だからねー
しょうこ   (めくって)これ!
内田先生   耳ついてても駄目だからねー
しょうこ   (めくるとドラえもんが首を吊っている絵)
内田先生   それ鉄拳のネタだからねー。パクりゃいいってもんじゃないよー
しょうこ   おわり!
内田先生   はい、しょうこちゃんとってもよくできませんでした。まばたき禁止の刑、第一号だからね
しょうこ   何でー
内田先生   よーし、じゃ次はともゆきくんいってみよう
ともゆき   はーい。(読む)僕の尊敬する人は、堤さやかと及川奈央です
内田先生   ともゆきくんそれAV女優の名前だねー。それはちょっとアウトだなー。まばたき禁止の刑第二号ね
ともゆき   はーい
内田先生   しょうこちゃんもともゆきくんも、頑張って書いてくれたのはわかるけど、ちゃんと主旨を理解したうえで頑張って欲しかったな。さて、それではたっちゃんいってみようか。たっちゃんOK?
坊主     うん
内田先生   それでは、たっちゃんお願いしまーす。作文、尊敬する人
坊主     (原稿用紙を開いて)…ぼくの尊敬する人は、お父さんです


       魔王、目を見張る。


坊主     お父さんは、駅前の屋台でラーメン屋をやっています。とってもおいしい特製ラーメンを作って、僕に食べさせてくれます。僕は学校が終わるといつもお父さんの屋台に行って、お父さんに遊んでもらいます。お父さんはおもしろくて、かっこよくて、僕はお父さんが大好きです。お父さんは…


       魔王、無言で出て行く。目で追う坊主。


内田先生   ん? どしたのたっちゃん?
坊主     …
内田先生   たっちゃん?


       坊主も魔王の後を追う。


内田先生   たっちゃんどこ行くの? おーい! たっちゃーん! どうしちゃったの!? たっちゃーん! あー、ちょっとみんな、ここ片付けて!


       みんなで無理やり場面転換。


内田先生   たっちゃんどうしちゃったのかな。もーたっちゃんたら。どうしちゃったんだろう(とか言いながらセットを組みかえる)たっちゃーん!


       みんな坊主を追って去る。

       ラーメン屋になった舞台に、おっちゃんが鼻歌を歌いながら歩いてくる。店の準備を始める感じ。
       そこへ魔王が歩いてくる。


おっちゃん  へいらっしゃい、何にしやしょう


       魔王、おっちゃんの胸倉をつかんでぶん投げる。


魔王     お前、人の子供を何だと思ってるんだ
おっちゃん  …
魔王     人の子供を何だと思ってるんだ! あの子は俺の子供だぞ! お前じゃない、俺だ! こんな汚いラーメン屋じゃない、俺なんだよ! 何だこんな、こんな屋台!


       魔王、置いてあったおっちゃんのバッグを蹴る。
       中からインスタントラーメンがたくさん出てくる。


魔王     …何だこれは
おっちゃん  …特製ラーメンっすよ。(笑って)ほんとは俺の晩飯なんすけどね


       おっちゃん、散らばったラーメンを拾う。
       魔王、またおっちゃんを投げる。


魔王     (胸倉をつかんだまま)もううちの子と会うな。会ったら殺すからな


       坊主走ってくる。


坊主     …何やってんだよ! やめろよ!


       坊主、魔王を引き剥がす。


坊主     おっちゃん大丈夫?
魔王     お前はしばらく、部屋から出るな。学校にも行ってはだめだ。家でおとなしくしていろ
坊主     …何だよ。おまえ何なんだよ! おまえ父さんじゃないんだからな! 忙しいって言って全然遊んでくれなかったくせに、ずーっと遊んでほしかったのに、なんで今になって遊ぼうなんて言うんだよ! そんなのお父さんじゃないんだよ! あっち行けよ!あっち行けよ魔王!


       坊主、インスタントラーメンを魔王に投げる。
       ぶつかって落ちたラーメンを拾う魔王。


魔王     …大事な話がある。母さんと一緒にうちで待ってるからな


       魔王、去る。


坊主     おっちゃん大丈夫? ケガとかしてない?


       おっちゃん坊主から離れる。


おっちゃん  坊主。…おめえ作文に何て書いたんだよ
坊主     えっ
おっちゃん  書くなっつったじゃねえかよ。何考えてんだおめえ
坊主     …あの、おっちゃん
おっちゃん  来んなよ。おめえと一緒にいるといい事なさそうだわ。もう来んな
坊主     …
おっちゃん  じゃ元気でな。バイバイ


       おっちゃん、帰り支度をして去る。
       立ち尽くす坊主。
       ともゆきがやってくる。


ともゆき   あー。先生ー、たっちゃんいたよー。たっちゃん


       坊主しゃがみこむ。


ともゆき   どしたー? うんこ?
坊主     …
ともゆき   ねえ、うんこ?


       暗転。

       『終章  おっちゃんと坊主と魔王』

       坊主の部屋。体育座りで顔を伏せ、動かない坊主。


魔王     (ノックして)入るぞ。…電気ぐらい灯けろ。目が悪くなるぞ
坊主     …
魔王     この部屋に入るのも久しぶりだな。掃除はいつもメイドに任せっきりだったから、母さんもあまり入ったことないんだろうな
坊主     …
魔王     この前、友達ができたって言ってたろう? どんな友達だ? 同じ学校の子か?


       坊主、沈黙。
       宅急便屋(ヤンキー内野の変装)が入ってくる。


ヤンキー内野 ちぃーす、宅急便でーす
魔王     あ、どうも
ヤンキー内野 ハンコとかいらないでーす
魔王     はいはい、お世話様
ヤンキー内野 (荷物を置いて)じゃ、失礼しゃーす


       ヤンキー内野、去る。


魔王     …夕飯はいらないのか?
坊主     …
魔王     今日も母さんが作ってくれたんだぞ
坊主     あっちいけ
魔王     少しでも食べてやれ。それに三人で話がしたいんだ
坊主     あっちいけ
魔王     貴信
坊主     (わずかに反応する)
魔王     …昔、三人で上野動物園行った時のこと覚えてるか? 貴信が三才か四才で、私がまだ今の仕事につく前だよ。あの頃はまだうちも貧乏だったから、旅行に行くって言ってもそこぐらいが精一杯だったんだよな。貴信はちっちゃくて動物園が何かもわかってなかったから、どっちかというと私と母さんの方がはしゃいでた感じだった。母さんが貴信をだっこして、あれがキリンさんだよとか、ぞうさんだよとか、いっぱい貴信に見せたけど、怖がっちゃって泣いてばっかりだったんだよ。あの頃の貴信はすごく怖がりだった


       魔王、話していくうちにだんだん父親の姿になっていく。


魔王     結局貴信が泣いてばかりいるから、三十分もしないうちに動物園を出て、そのまま電車に乗ってまっすぐ帰った。夜になって母さんが夕飯を作ろうとしたら、食材を買い忘れて作れなくって。冷蔵庫の中は空っぽで、ほんとに食べるものが何にもない。今じゃ考えられないような話だけどな。買いに行こうにも近所のスーパーは休みだったし、貴信はおなか空かして泣きじゃくってるし、父さんも母さんも困り果ててた。何とかしないとって思って父さん、家中の戸棚を空けて食べるものを探したら、一つだけあったんだよ。…インスタントラーメンが。ほんとに一つだけ。小さい鍋で一つだけのラーメンを作って、丼ぶりにも入れずにそのまま三人でラーメンをつっついて食べた。貴信は父さんのラーメンをおいしいおいしいって言いながら食べてくれた。…貴信、大事な話だからよく聞いてくれ。父さんと母さんは、これから別々に暮らすことになる。貴信は母さんと一緒だ。父さんはこの家を出て、他のところに行く。ここからずっと遠いところに。三人が一緒にいるのはこれで最後になるんだ


       坊主、嗚咽する。


魔王     それで母さんと話し合ってな、最後にみんなで旅行に行くことになったんだ。上野動物園に。そこで昼ごはんを食べた後、父さんはそのまま飛行機に乗る。来たくないのなら来なくてかまわないけど、母さんも三人でいたいって言ってるんだ。上野までの行き方はわかるな? 父さんと母さんは先に行って待ってるから、もし来る気があるなら、明日上野まで一人で来てくれ。…それじゃ、また明日な


       魔王、去る。
       しばらくすると荷物の中からヤンキー女が出てくる。


ヤンキー女  どぅあー!! 暑っちーこん中!!
坊主     …お姉ちゃん?
ヤンキー女  おい坊主、こんなとこに引きこもってる場合じゃねえぞ! 屋台の親父がやべえんだよ!
坊主     …おっちゃんが?
ヤンキー女  あの野郎、屋台畳んでどっか行くとかぬかしやがった! もう戻ってこねえとか言ってるぞ! 今デブが足止めにかかってっから、おめえ早く行ってやれ!
坊主     …
ヤンキー女  どうしたんだよ!? 早くしねえと親父行っちまうぜ!
坊主     僕…
ヤンキー女  何ためらってんだよ! あたいじゃあの親父止めらんねえんだよ、坊主が行かなきゃダメなんだよ!おら、早くしろ!
坊主     …
ヤンキー女  だーもう、おめえあの親父が好きなんだろ!? 特製ラーメン食いてえだろ!? 今行かなかったらおめぇ一生後悔するぞ! いいのか!?
坊主     …でも、父さんに見つかったら
ヤンキー女  そんときゃあたいの紅さそり魂で切り抜けてみせるさ! おめえも紅さそり隊の一員なら、黙って隊長についてこいや! 行くぞコラァ!


       ヤンキー女走り去る。


坊主     お姉ちゃん、あの…


       ためらった後、坊主も後を追う。思い出したように机の上の原稿用紙を取って走り去る。

       誰もいないラーメン屋台。
       ヤンキー内野がおっちゃんを引っ張ってくる。


ヤンキー内野 まーまーいいじゃねえかよ、一杯でいいから
おっちゃん  だから今日は店じまいだっつってんじゃねえか
ヤンキー内野 んなこと言わずによお、あたいはラーメンが食いたいのさ。あっ、やべっ、発作が!
おっちゃん  何だよ
ヤンキー内野 あたいは親父のラーメンを食わないと、心臓発作で死んじまう体なのさ
おっちゃん  じゃ早く死ねよ
ヤンキー内野 んだとてめえ、あたいが死ぬときはてめえも道連れにしてやっかんなコラァ。無理心中だぞコラァ
おっちゃん  発作どうでもよくなってんじゃねえか。もう放せよ
ヤンキー内野 じゃわかった、ラーメン作ってくれたらあんたを紅さそり隊の二番隊長にしてやる。あでも二番隊長はあたいだから、三番隊長にしてやる
おっちゃん  隊長三人もいらねえだろ
ヤンキー内野 じゃな、じゃな、このマスクを贈呈します
おっちゃん  もらってどうすんだよ
ヤンキー内野 これぶっちゃけ喋りづらいんだよ、モゴモゴいっちゃって。いらないからあげます
おっちゃん  いらねえもんを贈呈するな
ヤンキー内野 じゃえーと、えーと、
おっちゃん  じゃな
ヤンキー内野 あー待って! 待たないと殺す!
おっちゃん  はいはい殺してくれよ
ヤンキー内野 いや実際殺せねえんだけど! とにかく待って!
おっちゃん  あばよ


       坊主走ってくる。


坊主     おっちゃーん!
おっちゃん  …おお、坊主か。よく来たな
坊主     おっちゃん、ちょっとだけ待って。おっちゃんに聞いてほしいんだ
おっちゃん  聞いてほしい?
坊主     うん、読むから聞いて


       坊主、ポケットから原稿用紙を出そうとするが、
       ない。


坊主     …あれ!? ない! おかしいな、どこ行ったんだろ。何でこんな時に
おっちゃん  何がねえんだ?
坊主     …(あきらめて)あ、あの、おっちゃん、僕は…
おっちゃん  んー?
坊主     僕は、あの、えーと…やっぱり紙がないとダメだぁ
おっちゃん  何だよ紙って


       ヤンキー女走ってくる。


ヤンキー女  おー! 間に合ったんじゃねこれ!?
坊主     お姉ちゃん、紙なくなっちゃった!
ヤンキー女  紙? なんの?
坊主     作文!
ヤンキー女  あー、もしかしてこれか?
坊主     そうそれ!
ヤンキー女  おめえ落としてったぞ
坊主     ありがとう!


       坊主、受け取った原稿用紙を開いて読む。


坊主     尊敬する人。…僕の尊敬する人は、お父さんです。お父さんは、駅前の屋台でラーメン屋をやっています。とってもおいしい特製ラーメンを作って、僕に食べさせてくれます。僕は学校が終わるといつもお父さんの屋台に行って、お父さんに遊んでもらいます。お父さんはおもしろくて、かっこよくて、僕はお父さんが大好きです。お父さんは屋台のラーメン屋だけど、でももしかしたら屋台をやめて北海道に行ってしまうかもしれません。僕はお父さんと、おっちゃんといつまでも一緒に遊んでほしいです。おっちゃんが北海道にいくなら、僕も一緒に行きたいです。そしたら僕も修行してラーメン屋になって、おっちゃんの作るようなおいしいラーメンを作りたいです。それで作ったラーメンをおっちゃんと一緒に食べたいです。僕は世界中の誰よりもおっちゃんのことを尊敬しています。終わり


       坊主、読み終える頃には涙が止まらない。


おっちゃん  …そっか。坊主はそんなにおっちゃんが好きか
坊主     (うなずく)
おっちゃん  昨日はごめんな。おっちゃんも坊主が好きだぞ
坊主     (うなずく)
おっちゃん  でももうお別れしなきゃいけねんだ
坊主     …北海道行くの?
おっちゃん  いや、北海道じゃねんだ。…おっちゃんなー、子供がいるんだよ。ちょうど坊主とおんなじくらいの年で。もう何年も会ってねえけど
坊主     …
おっちゃん  今まで何度も会いに行こうとしたんだけど、その子の家の前に行くとどうしても足が動かなくなっちまうんだよ。ほら、おっちゃんはダメな奴だから。だからいつも会わずに帰ってきちまうんだ。坊主と初めて会った日な、ほんとはあの日も屋台畳んで子供に会いに行くつもりだったんだよ。でも坊主が来てさ、なんか坊主が俺の子供みたいに見えてきちゃってさ
坊主     …
おっちゃん  でもやっぱ、坊主は坊主だからな。俺もちゃんと自分の子供に会わなくちゃって思って。だからさ、残念だけど今日でお別れなんだ
坊主     …
おっちゃん  …坊主、おっちゃんと勝負するか?
坊主     勝負?
おっちゃん  おう、もしおっちゃんが今度こそ子供に会えたら、坊主は父ちゃんと仲直りしろや
坊主     …
おっちゃん  仲直りできなかったら坊主の負け、おっちゃんが子供に会えなかったらおっちゃんの負け。おっちゃんが負けたときは、またここに戻って屋台やってっから。どうだ?
坊主     …勝てないよ
おっちゃん  勝てる勝てる。てかこんなおっちゃんに負けてどううすんだよ
坊主     お父さんと仲直りすればいいんだね?
おっちゃん  おう
坊主     じゃあ、おっちゃんも絶対子供と会ってね。僕おっちゃんに勝ちたくないよ、引き分けがいい
おっちゃん  おうよ、引き分けにしようじゃねえか。そしたらおっちゃんと坊主はライバルだぞ
坊主     ライバルかぁ
おっちゃん  そう、ライバルだぞ。ライバルは一番仲がいい奴らなんだぞ
坊主     わかった、僕頑張るよ
おっちゃん  よーしよく言った。絶対忘れんなよ今の言葉。じゃ、おっちゃんもう行くからな
坊主     うん
おっちゃん  元気でな
坊主     うん…(去り際を呼び止める)おっちゃん、
おっちゃん  ん?
坊主     おっちゃんの特製ラーメン、僕にも作れるかな?
おっちゃん  簡単だよ、スーパーで買ってくりゃいいんだから
坊主     え?


       おっちゃん去る。ゆっくりと暗転。


坊主ナレ   おっちゃんとお別れした次の日、僕は一人で上野行きの電車に乗りました。上野駅で父さんと母さんを見つけて、僕はものすごく久しぶりに、父さんと母さんと三人で手をつないで歩きました。ちょっと恥ずかしかったけど。…それから毎日、僕はおっちゃんのいない屋台に通いつめました。一年たっても、三年たっても、十年たってもおっちゃんは戻ってきませんでした。僕とおっちゃんの勝負は、望みどおり引き分けに終わったのです


       ぼんやりとした明かりの中、おっちゃんと坊主と魔王の三人が屋台でラーメンを食べている。


坊主ナレ 今僕は父さんの会社を継いで、とっても忙しい毎日です。半年に一度くらいはお嫁さんと子供を連れて旅行に行きたい所ですが、なかなかそうもいきません。ちなみに僕の会社は食品メーカーで、今度あらたな企画としてインスタントラーメンの発売が決まりました。僕の作った特製ラーメン、おっちゃん食べてくれるかな。以上、おっちゃんと坊主と魔王のおはなしでした。ちゃんちゃん


       三人、ちゃんちゃんって感じの動き。おしまい。







 
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