グラン・ギニョール

「グラン・ギニョール」(Grand Guignol)

ギニョール」と言えば、いわゆる指人形のことを意味しますが、
これとはあまり関係なく、「グラン・ギニョール」とは、
19世紀末にフランスで流行した大衆的でコメディタッチな怪奇・恐怖劇のことを表します。
ご存じない方は、江戸川乱歩の描くエログロ的な世界観を想像すると
イメージとして近いのではないかと思います。

1894年、演出家のマックス・モレー、劇作家のオスカル・ムトニエなどが
パリにあった教会を改装し、キャパ300ほどの小劇場を開場。
この劇場では、照明や舞台装置を活用し、一般の劇場ではとても上演されないようなオカルト・ホラー的な演目が上演されていたそうで、
その内容が大人のための見せ物のようであったことから、
伝統的なパペットの名前である「ギニョール」が劇場名となり、
この小劇場は「グラン・ギニョール劇場」(Le Theatre du Grand-Guignol)」となりました。

一座はその後絶大な人気を誇りますが、他の劇場同様、
戦後には映画など他の娯楽産業との競争に敗れるかたちで衰退し、1962年に閉鎖。
しかし近年の日本でも、劇団やアーティストが名前や作品名として「グランギニョル」という言葉を使用するなど、
妖しい雰囲気をもった作品のジャンルを表すような場合に、その言葉は生き続けています。

近年の日本では、退廃・嘆美・幻想を連想させる音楽・物語・ファッションなどのことを「ゴシック」と言いますが、
最近のアーティストに影響を及ぼしたと思われる、先述の江戸川乱歩や、
ガストン・ルルー「オペラ座の怪人」などは非常にグラン・ギニョール的であると思いますし、
こうしたグロテスクなホラーの面に関しては、
現在広義で用いられる「ゴシック」にもグラン・ギニョールの影響が見られるのではないでしょうか。

「グラン・ギニョール」奥付

  • Posted : 2010年5月30日 19:44
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