半畳を入れる

「半畳を入れる」(はんじょうをいれる)

他人の言葉や行為をからかったり野次ったりすることを
「半畳を入れる」または「半畳を打つ」と言いますよね。
「横槍を入れる」とも似た意味合いのこの言葉は、歌舞伎の世界から生まれたものです。

江戸時代、芝居小屋で見物のときに使う敷物(ござのようなもの)を「半畳」と呼んでいました。
この半畳は、ちょうどタタミ一畳の半分ほどの大きさだったことからこう呼ばれるようになったもので、
観劇料を支払ったお客様に入り口などで渡したり、
劇場内で雑役係が販売したりしていたそうです。
(ちなみに、この販売係のことも「半畳」と呼びます。)

観劇に訪れたお客様は、この半畳に座って芝居見物をするわけですが、
その芝居や役者が気に入らないと、この半畳を舞台に投げ入れていたそうです。
現在で言えばヤジやブーイングに相当するもので、
大相撲の座布団を思い出していただくとわかりやすいのではないでしょうか。

この「半畳を入れる」行為が、そのまま一般的に世間でも使われるようになり、
からかう・非難する・野次るなどという意味を持つ言葉になったのです。

現在の演劇界では、お客様が半畳を入れるのを見かけることはほとんどありませんが、
俳優の立場で考えると、それは想像するだけでも恐ろしいことですよね。
しかし、好勝負を演じた場合でも、逆にあっけなく勝負がついてしまっても、座布団が舞うことのある大相撲と違い、
半畳を入れるには、入れるお客様の方も芝居を観る目が長けていることが要求されるわけで、
生半可なことでは出来なさそうにも思えます。
ということは、舞台はお客様と俳優の勝負の場になっていたということで、
もしかすると、それはそれで互いに良い緊張感が生まれていたのかもしれませんね。

「半畳を入れる」奥付

  • Posted : 2009年8月30日 01:47
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