被る

「被る」(かぶる)

「帽子をかぶる」「水をかぶる」というように、
「覆う」「浴びる」というような意味で幅広く使われる言葉「かぶる」。
芝居の世界では、他にもいくつかの意味合いで使われています。

まず、公演が終わることを指して使います。
現在、劇場は屋内施設が当たり前ですが、
江戸時代の頃、多くは広場や河原に芝居小屋を仮設していました。
当然、床は舗装などされていませんので、
公演が終わり、観客が一斉に席を立つと砂や埃が舞い上がります。
そして、この砂埃を観客が手拭いをかぶって防いだところから、
「芝居がかぶる」という言葉が、公演が終わることを指す言葉になりました。

同じく終演を意味する「はねる」という言葉は、
今では一般でも使われるほど普及していますが、
「かぶる」の方は、最近この意味ではあまり使われなくなってしまいました。
「芝居がかぶる」というと、上演する演目が別の団体と重なってしまったり、
役作りが他の役者と重なってしまうときなど、
「重なる」「ダブる」という意味を指す時に、よく使われていますね。


また、芝居の世界の隠語として
しくじる(失敗する)ことを指しても「かぶる」は使われます。
これは「毛氈をかぶる(もうせんをかぶる)」という昔の通り言葉が略されたもので、
歌舞伎の舞台で、死人となった役者を毛氈という動物の毛で出来た敷物で隠し、
舞台を去らせることから来ています。
死を意味するせいか、親や主人に顔向けできないような失敗をして
勘当されたりする場合に使われていたようですが、
これも今ではあまり使われない言葉になっていると思います。

こうしてみると、使われずに消えていく言葉もある一方、
一般にも普及して使われ続ける言葉もあり、不思議な感じがしますね。

「被る」奥付

  • Posted : 2008年6月 8日 01:29
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