「狂言回し」(きょうげんまわし)
「狂言回し」は、その名の通り狂言や歌舞伎の世界から生まれた言葉です。
役柄を大雑把に言うと「進行役」といった感じでしょうか。
ただ、「進行役」というとナレーションを務める役のように感じるかもしれませんが、
実際は作家によって様々な描かれ方をされています。
ストーリーの進行に重要な役柄であることは確かですが、
イコール進行役ではない、ということですね。
「狂言回し」は、物語の背景となる時代や場所、登場人物の概要を
お客様に向かって説明することが多い役割なので、
「語り手」であると言うことができるかもしれません。
シャーロック・ホームズで言うところの「ワトソン役」ですね。
このタイプの狂言回しの場合、
芝居のプロローグとエピローグの他、場面転換の時などに登場し、
観客に物語の進行を解説することが多くなっています。
そしてこの「狂言回し」は、
面白いことに、ほぼすべての作品において主人公ではありません。
狂言回しが物語の中にも入り込み、重要な役を務めている場合もありますが、
物語の外から客観的に伝える第三者であることも多く、
なかなか主役にはなり得ない役柄であると言えそうです。
しかし芝居によっては、脚本上主人公ではない狂言回しが、
主人公に見えてしまう場合があります。
つまり、主役を食う可能性の高い役であることが多い、ということですね。
また、こうした芝居の中の役割から転じて、
表立たずに物事の進行を務める役割の人を、一般にも「狂言回し」と言いますね。
ここでも、自分が主役となって物事を進めるのではなく、
自分は道化となって別の主役のために物事を進める場合に使われる言葉となっています。
ところで、「狂言」が喜劇であることから、
面白いことや変わったことをする人を指す言葉として
「狂言回し」を使っているケースを見かけますが、
その場合は「道化」などの方が適切な言葉となります。
狂言回しは道化役であることが多いですが、道化=狂言回しではないわけですね。
また、単に物語の中で重要な役目を果たす人(キーパーソン)を
指して使っていることもありますが、これも誤りで、
あくまで進行に関わる、進行を司る役割のことを「狂言回し」と言います。