なぐり

「なぐり」

一般に「金槌(かなづち)・トンカチ・ハンマー」と呼ばれることの多い
釘を打つ大工道具を、芝居の世界では「なぐり」と呼びます。

普通の金槌でも構わないのですが、
舞台用の「なぐり」というものも存在します。
これは、一般の金槌よりも柄が長いのが特徴で、
頭部分は、一方が四角く平らな打撃面、もう片方が釘抜きになっています。
そして、釘を打つのと同じくらい頻繁に釘抜きとしても使用するため、
くさびでだけでなく、金具で頭と柄を止めてあるのが大きな特徴です。

この「なぐり」は柄が長いため、釘を打つ時に通常よりも大きな力を出すことができます。
つまり、少ない回数で釘を打つことができるのです。
また、釘を抜く場合も同様で、少ない力で大きな効果を発揮させることができます。
組み立てと解体が繰り返されることの多い、
舞台の仕込みバラしをスムーズにこなせるようになっているのですね。
しかし、柄が長いため扱いづらく、
慣れない人が指を打っている場面をよく目撃しますが・・・

この「なぐり」という言葉の語源は、暴力の「殴る」ではなく、
松の枝をおろしたものから葉をとったもののことを、
「なぐり」と言っていたことから来たと言われています。
柄の材料として、堅い松の木を使っていたのではないでしょうか。

ちなみに「なぐり」の同意語であり、
頭にとがった部分のない金槌を意味する「げんのう(玄翁)」は、
昔、玄翁和尚という人が金槌を使い、
悪霊が宿っているといわれた殺生石を割って悪霊を取り除いたという言い伝えが語源です。
石を砕くための金槌を「玄翁」と呼ぶようになったわけですね。

また、泳げない人のことを「かなづち」と呼ぶのは、
金槌は頭が重くて水に沈むことに由来しています。

「なぐり」奥付

  • Posted : 2009年4月23日 03:03
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  • Category : 道具 | 舞台・演劇用語 | シアターリーグ