正面を切る

「正面を切る」(しょうめんをきる)

相手とまっすぐに向き合うという意味から、
「堂々と」「改まって」「気を引き締めて」などの意味で
一般的にも使われている「正面を切る」。
元々は、歌舞伎の世界から生まれた言葉です。

「正面を切る」とは、
歌舞伎の舞台上で、お客様に面と向かい(客席の正面に向かい)、
口上を述べたり演技をしたりすることを指す言葉で、
現在の演劇においても同じように使われます。
例えば「そこ、正面切って」と演出家に言われたときは、
「お客様の方に向かって」といった感じの意味になります。

新劇や商業演劇などでは、「お客様が見やすいように」という意味もあって、
会話のシーンでも向き合って話さずに客席を向いて話すなど、
やたらと正面を切るシーンが多かったり、
家庭の食卓では、客席側に椅子がなかったりと、
現実にはあり得ない、芝居ならではの演出が多々ありますが、
ナチュラリズムが確立されてきた昨今の演劇においては、
このような行為が不自然では、という考え方も増えてきています。

お客様に背中やお尻を向けることは確かに失礼かもしれませんが、
それよりも、お客様を作品の世界に誘うことの方が大切ですよね。
ですから正面を切る芝居は、
その役の人物が堂々としていたり、立派だったりすることを表したり、
決意を独白したり、感情を露わにするなど、
何かの意味を持った演出の1つであることの方が多いように感じられます。

「正面を切る」奥付

  • Posted : 2008年9月29日 18:45
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