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2011年4月 5日

原発と放射能のマスコミ報道について

前回も文句を書きましたが、特にテレビは地震による被災者の不幸物語や感動物語を垂れ流すばかりで、
東電や政府が明らかにしようとしない情報を暴こうという姿勢がまったくない、
という次元でさえなく、彼らが発表している情報さえまともに報道しないということがわかってしまい、悲しく残念な今日この頃です。

私は、日本のテレビはニュースメディアとしては役に立たないということを改めて痛感したので、
テレビでニュースを見ようと思ったときはCNNを見ていたのですが、
アメリカのテレビ局であるCNNでも、リビアの件が起こる前は日本のニュース一色で、
地震の被害はもちろん、原発問題もその危険性から今後の見通し、
為替や株価に至る経済への影響まで、満遍なく「ニュース」を伝えてくれるので、非常に役立ちました。

最近の話題で例えを挙げると、
放射能の拡散に関して、私たちにとって重要な情報の一つに風向きがありますが、
これも日本ではまったく報道されてきませんでした。
ようやく4日になって、政府が気象庁に公開を指示しましたが、
これも気象庁の放射性物質拡散予測を政府が公開していないことを
読売新聞などが指摘したのを受けての対応なのは、タイミング的に間違いないところでしょう。
こうした記事こそが、マスコミが果たすべき役割であると思いますし、
今回はgood jobと言えるのかもしれませんが、マスコミが早くから追求していれば、
もっと早くから公開されていたのだと思いますし、いかんせん遅すぎるように感じます。
まぁマスコミにそこまでのジャーナリズムが求められないのだとしても、
このような重要な情報を報道するということは、メディアとしての役割のはず。
しかし残念なことに、実際は政府の対応に追随するだけでしたね。
ちなみにCNNでは、事故が判明した当初から東北地方の天気予報と共に風向き予想も定期的に放送していましたし、
ドイツやフランスなどの気象サイトでも拡散予想を更新し続けています。

もう一つ重要な例を挙げると、放射性物質に汚染された食品の件があります。
例えば先日シンガポールで、日本から輸入した小松菜からヨウ素131が648ベクレル検出され、
シンガポールが規定する100ベクレルを超えたため輸入禁止の措置を講じたというニュースがありました。
しかし、日本では3月17日に厚生労働省が飲食物摂取制限に関する指標を発表し、
根菜・芋類を除く野菜に関しては2,000ベクレルまで許容するとしたため、
648ベクレルの小松菜は、日本の暫定期生を遙かに下回ったとして、何の問題もなく市場に出回るはず。
100ベクレルと2,000ベクレル、実に20倍もの開きがあるわけで、
(特に小さな子供が)食べても本当に大丈夫なのか?と無知な私は心配になってしまいます。
しかし政府は、2,000ベクレルを総合的に判断した数値としか説明してくれませんし、
マスコミも、せっかく作った作物を破棄せざるを得ない農家の方々への影響という方向から報じることが多く、
消費する国民への影響という観点ではほとんど取り上げません。
それに、私は千葉に住んでいるのですが、
3月22日に採取した水から336ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたと、29日になってから発表されたりする現実があるわけで、
こんな状況では買い占める奴が悪いとか、風評被害が酷いとかいうことではなく、
情報が遅く不足しているのと、情報の出し方が悪いと言わざるを得ないのではないでしょうか。

こうした様々な点から察するに、政府は放射能はたいして心配ないという印象を、国民に植え付けようとしているように感じます。
それは、首都圏にいる数千万人をパニックに陥らせないためとか、
日本の経済的なダメージを回避するためとか、原発の利権を守りたいとか、理由はいろいろあると思いますが、
問題なのは、本来権力を批判する立場にあるべきマスコミもそれに迎合し、
こうした問題点を指摘する報道すらほとんど為されないということです。
テレビに登場するのは「直ちに影響はない」と政府に追随する意見を述べる御用学者ばかりですし、
ニュースキャスターは放射性物質と放射能、per hourとper yearを混同し、
レントゲンやCTと同じ被曝量だから「直ちに影響はない」。
呆れたことにテレビでは事故後も東電のCMを流していますが、そうした巨大なスポンサーである東電に逆らえないのか、
原発の利権をマスコミも享受しているのか、そもそも政府とズブズブなのか、私にはわかりませんけれど、
テレビを筆頭としたマスコミには、隠された情報を暴こうとするようなジャーナリズムがないのはもちろん、
中立的な立場からの報道さえできていない印象を受けます。

原因を一言で言えば、悪く言うと金さえ貰えば何でもするという粋すぎた資本主義、
良く言えば企業に忠誠を尽くす日本人の気質なのでしょうか。
先の大戦のときのマスコミもこんなんだったのかなぁ、
水銀やアスベスト、非加熱製剤のときの政府もこんなんだったのかなぁ、などと夢想しつつ、
後々酷い事態にならないことを祈るばかりの今日この頃です。
まぁ今回は枝野官房長官も「直ちに影響が出るものではない」と言っているだけで、
「今後のことについて大丈夫だと言っているわけではない」と明言していますし、
自分の身は自分で守れということなのかもしれませんけどね。

「原発と放射能のマスコミ報道について」奥付

  • Posted : 2011年4月 5日 18:10
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