一声、二顔、三姿

「一声、二顔、三姿」
「一声、二振、三男」

芝居の世界では、良い役者の素養は「一声、二顔、三姿」と言われます。
つまり、1番大事なのは「声」で、2番目に「顔」、3番目が「姿」という意味ですね。
同じような表現で、特に歌舞伎界では「一声、二振、三男」という表現もあるのですが、
ともかく美男子であることや背格好が良いこと、
所作や立ち振る舞いが綺麗だったり上手かったりすることよりも、
発声や台詞廻し、声質などの口跡が最も重要だと言い表しているものです。

これは、日本では歌舞伎の世界で言われている表現ではありますが、
口跡が最も重要という考え方自体は、独特の言い回しがある歌舞伎ならでは、というわけでもありません。
例えばシェイクスピア「ハムレット」では「hear」、
つまり台詞や芝居を「聴く」と表現されているものもありますし、
当時の舞台は聴きに行くものだったとも伝えられています。

現在、大劇場では声をマイクで拾って拡声することもできますが、
PAなどという概念もなかった時代には、
生の声で観客にはっきりと台詞を伝えることが必須だったわけで、
発声や滑舌などが今よりもさらに重要だったのでしょうね。

また、私たちが普段人と接しているときでも、
動きや身振りよりも、ちょっとした声色や話し方から相手の気持ちや心情を理解するものですし、
そういった意味合いから、芝居としても「声」が最も重要だということかもしれませんね。

「一声、二顔、三姿」奥付

  • Posted : 2011年2月27日 20:02
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