遠見

「遠見」(とおみ)(えんけん)

「遠見」は、歌舞伎の世界から生まれた言葉で、
背景を描いた建具(パネル)のことです。
文字通り、遠くに見える景色を描いたもののことで、
山や海、野原や庭園、町並みなど様々なものがあります。

このように風景を描いた「遠見」に対し、
建物や家財などを、しっかりと線を引いて描いたものを「書き割り」と言います。
また、背景画が描かれた幕を吊る場合もあり、
これを「ドロップ」と言います。
ドロップは値段もかなり高い物ですが、
幕としてアップダウン出来るので演出上利便性が高く、重宝されています。

「遠見」は、写実的な物から抽象的な物まで様々なシーンで利用され、
舞台演劇において非常に大切な道具の一つです。
例えば、遥か遠くまで描いた遠見を用いることで狭い舞台を広く見せたり、
夏景色・冬景色の遠見を使って、同じ舞台セットながら季節を変えたりと、
作品に幅や臨場感を持たせることが出来るようになるわけです。
映像であればロケをするところ、
舞台では遠見を利用するという感じですね。

また能楽において、遠くを見るような仕草をすることで、
お客様に遠くの景色を感じさせる手法のことも「遠見」と言います。
この場合は「とおみ」ではなく「えんけん」と読むのですが、
能における「えんけん」が、歌舞伎由来である「とおみ」の語源なのかもしれませんね。

「遠見」奥付

  • Posted : 2009年2月21日 02:42
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