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2012年8月13日

■パゾリーニ戯曲初翻訳紹介第三弾「文体の獣」

T FactoryによるP.P.パゾリーニの戯曲翻訳紹介第3弾「文体の獣」が、10月に上演されます。

川村毅の構成・演出で、ピエル・パオロ・パゾリーニ(Pier Paolo Pasolini)の6作品を日本初演する試みを行っているティーファクトリー。
2011年5月の第1弾「豚小屋」、今年4月の第2弾「騙り。」に続く第3弾として、
作者自らが<自伝>と称し、1965年から亡くなる前年である1974年にかけて改作を繰り返したという詩劇『文体の獣』が上演されます。

キャストは、伝統の江戸糸あやつり人形で意欲的な試みをつづける結城一糸に加え、中村崇、葉山レイコ、千葉哲也など。
翻訳は石川若枝、衣裳・美粧は宇野亜喜良、構成・演出は川村毅。

T Factory(ティーファクトリー) P.P.Pasolini's Bestia da stile「文体の獣」。は、10月13日から21日に東京・中野のテアトルBONBONで上演。
チケットは全席指定、前売4500円、当日4800円、30歳以下3900円(税込)で8月28日発売。


T Factory「文体の獣」
日程:2012/10/13〜10/21 テアトルBONBON(東京)
演出:川村毅
原作:ピエル・パオロ・パゾリーニ
翻訳:石川若枝
出演:結城一糸/中村崇/葉山レイコ/千葉哲也/
   小谷真一/南かおり/松田光宏/蓮見のりこ/芦田崇/麻生絵里子/片岡ちひろ/加藤純奈/緒形水咲/梅村綾子/清水さと/
   山本達也/田中孝宗/田中真之/川崎勇人/結城敬太(江戸糸あやつり人形座)
チケット:[東京]

あらすじ
1930年代末のチェコの小さな町・セミツェ。ヤン・パゾリーニは詩人になる意思を表明する。
時にドイツ軍がプラハに侵攻、ヤンは友人・カレルと共に山中に入りパルチザンとなる。
戦後、成功した詩人となったヤンを、同志であり師であるノヴォメスキーは、
文学ではなく社会主義を通した現実を基盤としたと批判し、戦死した母の亡霊はそんなヤンを責め、暗い未来を予言する。
<資本>と<革命>がヤンを取り合い、最後は資本が彼をあきらめ、立ち去ろうとする。

『文体の獣』について:川村毅
翻訳されてきた戯曲に初めて目を通し、パゾリーニからまた新たな挑戦状が届けられたと、読み終えたそれを前にして思わず知らず正座している自分に気がつきました。
 『豚小屋』、『騙り。』がそうであったように、今回もまた楽はさせてはくれそうにありません。私はすでにパゾリーニの戯曲はポスト・ドラマであると信じてやみません。ポスト・ドラマの戯曲とは演出家に、演劇という装置を通して演出家自身の思想の検証と更新を求める性質を持っています。パゾリーニの戯曲はとりわけその強度が高く、ぼんやり戯曲の言葉の再現だけに関わろうとする演出姿勢では成立されません。
 『豚小屋』と『騙り。』はコインの裏表のような関係性を持っていましたが、『文体の獣』は、これらとはまったく異なった設定で書かれています。前作『騙り。』の、イタリア本国をはじめとしてヨーロッパでの上演回数の多さに比べると、こちらは呆れるほどに少ないという情報を得るにつけ、えらい厄介なものに取り組んでしまったと、夜更け、弱気の虫に襲われたりもしますが、パゾリーニへの恩義のために放擲するわけにはいきません。まあ、私の一方通行の勝手な恩義の念ですが。
 そもそも、この戯曲を自伝と称しながら、なぜ舞台がチェコスロヴァキアで、主人公がチェコ人なのか?この設定からして謎なわけです。謎だ...とつぶやきながら考えるわけです。
 作家は、チェコスロヴァキアにおける戦時のナチズムと戦後のスターリニズムという目に見えるファシズムと、一方資本主義体制化で戦後高度成長を遂げるイタリアの、資本主義と拝金主義という目に見えないファシズムを横断して描こうとしたのではないか。
 共産主義国家の作家として成功する詩人の過去と背後には何百何千という死者が、成仏できないまま彷徨っている。しかし、確認しなければならないのは、平和と繁栄を謳歌する資本主義国家の作家にも同様の死者たちが存在することを忘れてはならない。資本主義という名のファシズムによって殺戮された死者たちが。
 主人公の名前は、1969年、チェコスロヴァキアへのソ連の軍事介入に抗議して焼身自殺を図った大学生ヤン・パラフからとっているといいます。
 パゾリーニはかつてグラムシに私淑するマルクス主義者でしたが、資本主義への懐疑同様、共産主義万歳を唱えることもできず、絶大な苦悩に宙吊りにされた状態で殺害されたといえないでしょうか。その宙吊り地獄が、21世紀の現在、未だ解決不能のまま生きているのです。

●ピエル・パオロ・パゾリーニ戯曲集全6作品日本初演企画(演出・川村毅)
Orgia オルジァ:2003年世田谷パブリックシアター主催リーディング上演
Porcile 豚小屋:2011年座・高円寺提携上演
Affabulazione 騙り。:2012年座・高円寺提携上演
Bestia da stile 文体の獣:2012年10月テアトルBONBONにて上演
Pilade ピラデ:2013年春リーディング上演予定
Calderon カルデロン:2013年、最終章として上演予定

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「パゾリーニ戯曲初翻訳紹介第三弾「文体の獣」」奥付

  • Posted : 2012年8月13日 17:55
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