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2008年2月15日

■演劇子役に労基法の壁

東京新聞が"『就労午後9時まで』は早過ぎる! 演劇子役に労基法の"壁""という記事を掲載しています。

舞台に出演する子役の就労時間をめぐり、国内の演劇団体などが現行の午後九時までから同十時までに延長するよう、労働基準法の改正を政府に要望している。
主要な演劇の九割方が午後九時台に終演を迎え、子役抜きでは舞台上の表現に大きな支障を来すためだ。
日本は欧米に比べて厳しい法の規定があり、監督する厚生労働省は慎重な構えを崩さない。
児童の福祉と俳優の可能性のはざまで揺れる子役たちの問題を追った。(安食美智子)
東京新聞2008年2月15日

記事では、子役が重要な役を占めるミュージカルライオンキング」「レ・ミゼラブル」「モーツァルト!」を例に挙げ、様々な弊害を伝えています。
日本演劇興行協会が提出した要望書では、公演側の対応として
開演時間を早める、小柄な大人で対応する、内容を変更する、
秀作であっても企画段階で断念する、などの対応実例を挙げ、問題を指摘しています。

立ちはだかっているのが労働基準法の"壁"だ。
同法では、十五歳未満(満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで)の子どもは、労働基準監督署の許可を得た上で午後八時までの舞台出演が可能と定めている。
これに対し演劇界は、長年にわたって就労可能時間の延長を要求。
二〇〇三年、政府の構造改革特区推進本部が規制緩和の一環として、厚生労働省の告示による手段で「午後九時まで」への緩和を特例的に決定、〇五年一月から実施された。

長年、日本演劇興行協会などは午後10時までの子役出演時間の延長を求めていましたが、
9時までということで2005年の1月1日から実施されました。
これは構造改革特区の1つで、一般に「モーニング娘。特区」と言われているもの。
ともかく、このときから子役の出演できる時間が、
それまでの夜8時から夜9時に延長されています。

また要望書では海外の出演時間例を挙げ、
ブロードウェイでは午後11時、カリフォルニアは午後10時(許可により午前0時まで可能)、
イギリスは13歳未満が午後10時、13歳以上が午後10時30分などと記しています。
映画や演劇などのソフト配給国となっている英米とは
こうしたところから差異が出てしまっているのがわかりますね。

「(05年に)九時まで延長したことは十時への経過措置」として、さらに夜十時までの就労が可能になるよう法改正を要望。
昨年十二月に開かれた内閣府の知的財産推進本部コンテンツ・日本ブランド専門調査会コンテンツ企画ワーキンググループの第三回会合に提案し、〇八年度の知的財産推進計画に盛り込むよう求めた。
今月上旬に開かれた第四回会合では厚生労働省の強い抵抗があり、内閣府は同計画のたたき台となる中間報告案に盛り込むことを断念。 現段階では、同計画に明記される可能性は低いという。
監督する厚生労働省側は「午後九時まで」はあくまで暫定措置であり、法律上は午後八時まで−というのが基本スタンス。 演劇界側の認識と大きく異なっている。
同省労働基準局監督課は「さまざまな要望があるのは理解している。 児童の福祉を保護し、健全な発育を図ることに留意しつつ、引き続き慎重に検討したい」と話している。

過去には、年少者でも芸能に優れ代替がきかない等いくつかの理由がある人に限り、
これを労働と見なさない、という通達が出されたことがあります。
一部の年少者が夜間のテレビ番組などに出演できるのは
おそらくこれが理由なのだと思いますが、
一方で舞台出演者にこうした融通が利かされた事例は聞いたことがありません。

他にも、塾通いやスポーツ、習い事などを考えれば
年少者が夜間に活動するのは珍しいことではないように思えます。
これは「労働」ということなので、安易に許可してしまうのも問題ですが、
舞台に関わることは、本人にとっても勉強になることの方が多いと思いますし、
文化的な見地からも、なんとかしてほしいような気がします。
例えば、届け出した上での許認可制にする、夜間はきちんと送迎する、
家庭教師を付けるなど勉強もできる態勢を整える、
といった具体的な規制をかけた上で認可すれば良いんじゃないかな
と思うのですが、いかがでしょうか。

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「演劇子役に労基法の壁」奥付

  • Posted : 2008年2月15日 21:04
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  • Category : 俳優 | 演劇ニュース | シアターリーグ