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2012年12月31日

■新聞の2012年演劇回顧

2012年演劇界を振り返る、新聞各紙の記事です。

読売新聞

12月12日に山内則史の署名記事で「回顧2012 演劇」を掲載。
大見出しは「蜷川、野田、三谷 充実の舞台」で、蜷川幸雄下谷万年町物語」「海辺のカフカ」「ボクの四谷怪談」「トロイアの女たち」。
東京芸術劇場芸術監督の野田秀樹NODA・MAP「エッグ」、「THE BEE」。三谷幸喜は、三谷版「桜の園」を挙げています。
その他、ケラリーノ・サンドロヴィッチ百年の秘密」、鄭義信作・演出「パーマ屋スミレ」、
串田和美作・演出「K.ファウスト」、平田オリザ作・演出「アンドロイド版『三人姉妹』」、
川村毅作、白井晃演出「4 four」、文学座アトリエの会「NASZA KLASA」(演出・高瀬久男)、アーサー・ミラー作「るつぼ」の演出・宮田慶子、
「The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)」作・演出の前川知大、柴幸男作・演出「朝がある」、
中屋敷法仁作・演出「無差別」、中津留章仁作・演出「狂おしき怠惰」、三浦基演出「光のない。」が挙げられています。
また企画では「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」、岸田國士戯曲賞3人受賞
ミュージカルでは東急シアターオーブの誕生「ロミオ&ジュリエット」来日公演、韓国ミュージカル好調などが触れられ、
物故者では森光子大滝秀治、山田五十鈴、春日野八千代、小沢昭一の名前が挙げられています。


産経新聞

12月22日に「回顧 平成24年エンタメ」を掲載。見出しは「演劇 相次いだ大女優の鬼籍入り 文楽、補助金で図らずも注目」
現代演劇では、山田五十鈴、春日野八千代、森光子の死去から記事がスタート。
公演は「こんばんは、父さん」(永井愛作)、「地球の王様」(金子茂樹作)、岡本かの子の評伝「エゲリア」(瀬戸口郁作)、
「ロバート・キャパ 魂の記憶」(原田諒作)「ナシャ・クラサ」(高瀬久男演出)「るつぼ」(宮田慶子演出)が挙げられています。
続いて東京芸術劇場再開場青山劇場ル・テアトル銀座の閉場予定を記載。
戯曲の力を再確認させた「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」、川村毅作「4 four」は世田谷パブリックシアターの企画力が光った、としています。

伝統芸能では、中村勘三郎の死去、勘九郎市川猿之助の襲名香川照之(市川中車)の歌舞伎界入り、
橋下徹市長の文楽協会への補助金凍結宣言、三谷幸喜の新作文楽「其礼成心中」などが挙げられ
伝統文化を後世に伝えるための支援のあり方と、制作側の企画努力の必要性も考えさせられた騒動だった、としています。

30日「2012年 文化部記者のベスト3」では、飯塚友子が宝塚歌劇の話題を掲載。
「シビれた男役ベスト3」として早霧せいな、月央和沙、紫苑ゆう。
「もう一度見たい舞台ベスト3」としてロバート・キャパ 魂の記録」、蘭寿とむコンサート「Streak of LIGHT」、「復活 恋が終わり、愛が残った」を挙げています。


朝日

12月22日に西本ゆかの署名記事で「回顧2012:演劇」を掲載。大見出しは「きしむ世界 死者に学べ」。
「続く余震に、国内外で増幅するナショナリズムのきしみが重なり、黙示のように響き続けたこの1年。死を見つめよ、死に学べ、死者の声を聞け。警告が続く。」と朝日らしいイデオロギー溢れる書き出しで、
文学座・高瀬久男演出「ナシャ・クラサ」、加藤健一事務所「シュペリオール・ドーナツ」、宮田慶子演出の新国立劇場「負傷者16人」を民族対立が背景として列挙。
野田秀樹「エッグ」は戦前戦中の思考停止に重ねたとし、「THE BEE」再演では報復の連鎖を過去にできる日は遠いと記載。
「トロイアの女たち」で蜷川幸雄は祈りと希望を舞台に込めたと訓示し、
鄭義信「ぼくに炎の戦車を」は揺れる日韓の原点を直視、坂手洋二は「星の息子」でオスプレイ配備の沖縄を描いたと記しています。

中見出しは「芝居の力に新たな息吹」。
「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」、平田オリザ作・演出「アンドロイド版『三人姉妹』」
マームとジプシー「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト」、E・イエリネク「光のない2」
永井愛「こんばんは、父さん」、松尾スズキ「生きちゃってどうすんだ」などが挙げられています。
逝去者として山田五十鈴、春日野八千代、森光子、大滝秀治、小沢昭一。

古典芸能は「古典、次代へつなぐ正念場」の見出し。
中村雀右衛門、中村勘三郎の他界から未来への扉が閉じることを危惧。
市川亀治郎の猿之助襲名、香川照之と息子の梨園入り、重傷を負った市川染五郎の来年復帰、
初役挑戦が続く尾上菊之助の成長、襲名興行が好調な中村勘九郎「天日坊」などを記載。
文楽は橋下徹大阪市長との補助金を巡る論争、渦中で倒れた竹本住大夫の長期休演、三谷幸喜「其礼成心中」などに触れられています。
結びでは、歌舞伎の坂東玉三郎、狂言の山本東次郎が新たな人間国宝に。松本幸四郎は文化功労者に選ばれた、としています。

私の3点では、大笹吉雄が「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」、「ぼくに炎の戦車を」(鄭義信作・演出)、コクーン歌舞伎「天日坊」(宮藤官九郎脚本、串田和美演出)。
熊井玲(「シアターガイド」編集長)がコクーン歌舞伎「天日坊」、新国立劇場「パーマ屋スミレ」(鄭義信作・演出)、子供鉅人「幕末スープレックス」(益山貴司脚本・演出)。
扇田昭彦がNODA・MAP「エッグ」、二兎社「こんばんは、父さん」(永井愛作・演出)、こまつ座&ホリプロ「日の浦姫物語」(井上ひさし作、蜷川幸雄演出)。


日本経済新聞

12月30日に内田洋一の署名記事で「演劇回顧2012」を掲載。
見出しは「歴史と向きあう演劇」で、「パーマ屋スミレ」「ぼくに炎の戦車を」の鄭義信、NODA・MAP「エッグ」の野田秀樹の2人の劇作家を挙げてスタート。
演出家では蜷川幸雄「トロイアの女たち」、創作劇の秀作として永井愛「こんばんは、父さん」、桟敷童子「泳ぐ機関車」(東憲司)、イキウメ「ミッション」(前川知大)を挙げています。
続いて原発事故の危機から佳編が生まれたとし、F/Tから地点「光のない。」(三浦基演出)と高山明構成・演出「光のない2」。
岡田利規作・演出「現在地」、俳優座「いのちの渚」(吉原公一郎作、落合真奈美演出)を記載。
そして、少数の作品を除いて創作劇は不振で、みるべきものが多かったのは翻訳劇だったとし、
アーサー・ミラー「るつぼ」、ハロルド・ピンター「温室」、エリアム・クライエム「負傷者16人」、
文学座アトリエ「ナシャ・クラサ 私たちは共に学んだ」演劇集団円「ガリレイの生涯」などを挙げています。
また印象に残る問題作として、平田オリザのロボット演劇と、美術家やなぎみわの演劇プロジェクトを記載。
井上ひさし生誕77フェスティバル2012」では中でも「闇に咲く花」の栗山民也演出が冴えたと評価しています。
その他、劇場法の施行、神奈川芸術劇場のキッズ・プログラム「暗いところからやってくる」(前川知大脚本、小川絵梨子演出)、長塚圭史作・演出「音のいない世界で」に触れ、
まつもと市民芸術館「K.ファウスト」(芸術監督串田和美演出)が海外のサーカス・アーティストと組んだことから、
粗製乱造の弊が目立つ演劇界にあって、公立劇場は特性を生かし、時間をかけた創作に比重を移したい、としています。

歌舞伎では中村勘三郎の急逝、歌舞伎全般の不入りが気にかかるとし、来春の歌舞伎座新開場が正念場としています。
秀作として挙げられたのは「天日坊」(宮藤官九郎台本)。
文楽は助成金削減問題、能楽では観世清和「阿古屋松」の復興に触れています。
最後に俳優では、「下谷万年町物語」「THE BEE」の宮沢りえ、「サド侯爵夫人」三谷版「桜の園」の神野三鈴、
「パーマ屋スミレ」の南果歩、「シレンとラギ」の永作博美、「日の浦姫物語」の大竹しのぶ、「るつぼ」の鈴木杏、深谷美歩。
男優では市川亀治郎改め猿之助。「THE BEE」の野田秀樹、「エンロン」の市村正親、「負傷者16人」の益岡徹、
「海辺のカフカ」の木場勝己、「温室」の段田安則と高橋一生、「こんばんは、父さん」の平幹二朗、佐々木蔵之介、
「るつぼ」の池内博之、磯部勉、「ハーベスト」の平岳大が挙げられています。


毎日新聞

12月12日に「演劇:この1年」を掲載。見出しは「中堅、ベテランが奮起 英米劇作家作品で好舞台」。
2012年の柱となった企画は「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」だとし、中でも「藪原検校」の野村萬斎、「芭蕉通夜舟」の坂東三津五郎、「日の浦姫物語」の蜷川幸雄の演出を記載。
また全体的に中堅からベテランの演出家が奮起して存在感を示したとし、NODA・MAP「THE BEE」、三谷幸喜「其礼成心中」、
劇団四季ミュージカル「ライオンキング」公演8,000回突破を挙げています。
また若手はいささか存在感を欠いたとし、唯一小川絵梨子「ミッション」「暗いところからやってくる」を好演出と評価。
逆に英米の劇作家の作品に好演が目立ったとし、新国立劇場「負傷者16人」「るつぼ」、青年座「THAT FACE」(ポリー・ステナム)を記載。
最後に劇場法の施行、大滝秀治、中村美代子、里居正美、内藤武敏の訃報を記しています。

12月25日には小玉祥子の署名記事で「大劇場:この1年」を掲載。見出しは「中村勘九郎襲名披露「鈴ケ森」完成度高く」。
冒頭は中村雀右衛門、山田五十鈴、春日野八千代、森光子、中村勘三郎の他界。
ミュージカル初演では宝塚星組「オーシャンズ11」、「ダディ・ロング・レッグズ」、「サンセット大通り」を挙げ、
柚希礼音、安蘭けい、井上芳雄、坂本真綾らが優れた演技を見せたと評価。
ミュージカル以外では新派「東京物語」、「ええから加減」。
2月の中村勘九郎襲名披露における、中村吉右衛門の長兵衛、勘三郎の権八で上演された「鈴ケ森」が今年屈指の完成度だったとし、
勘九郎は「鏡獅子」「土蜘」でも優れた演技だったと評価。
また二代目市川猿翁、四代目市川猿之助、九代目市川中車襲名披露があったとし、
猿之助はスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」、舞踊「黒塚」で実力を発揮。
中車は「小栗栖の長兵衛」「将軍江戸を去る」で今後に期待を抱かせたとしています。
8月には市川染五郎が舞踊公演中の怪我で休演したものの代役により細部まで行き届いた好舞台となったと評価。
意欲的な通し上演として国立劇場10月公演「塩原多助一代記」。
その他新橋演舞場3月「仮名手本忠臣蔵九段目」、同10月「勧進帳」などが好企画と結んでいます。

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「新聞の2012年演劇回顧」奥付

  • Posted : 2012年12月31日 17:27
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